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現代社会の諸問題 ４．「社会問題」と逸脱－規範との相克－ ４－１．逸脱とは何か？ 一般的に社会学で逸脱[deviance]というと・・・ 集団や社会の大多数の成員が守る規範や価値に同調しない行為形態。（Giddens用語解説 1]） →規範[norm]から外れることを指す。 ※正常[the normal]と異常[the abnormal]／病理[the pathological]という区別が前提となる。 ここでもう一度、マートンのアノミー論を振り返ってみよう。 「・・・文化構造と社会構造がうまく統合されないとき、規範の崩壊へ、すなわち無規制状態へと向か わせる緊張[strain]が存在する（Merton[1969:163;苫訳]）」。 ※マートンによるモデルは、結局のところ規範からの偏差を逸脱とし、それの様式、あるいは規範への 同調[conformity]の類型をまとめたものと考えられる。 ４－２．レイベリング理論[labeling theory]―ベッカーをもとに― 上記のようなマートン流の逸脱論が流布していた時代に、反抗をみせたのが、ベッカーを嚆矢とする レイベリング理論であった。 Becker, Howard S. 1963 Outsiders : studies in the sociology of deviance, Free Press =1978 村 上直之訳『アウトサイダーズ』新泉社 □アウトサイダーとは ある規則が執行された場合、それに違反したとおぼしい人物は、特殊な人間－集団合意にもとづくもろも ろの規則にのっとった生き方の期待できない人間－と考えられる。つまり彼は、アウトサイダーと見なさ れるのである。:7 □逸脱の諸定義 容易に観察されることだが、異なる集団は、たがいに異なることがらを逸脱と判定する。:10 ①統計学的定義 標準からの極度のズレ z.b.トウモロコシの茎の長さ／女性の髪／人間の利き手 問題点：価値に関する数多くの問題点を度外視することによって、問題を単純化している ②病理[pathology]／「疾患」[disease]；医学的定義 器官や機能の障害＝病理 問題点：何が健全な行動を構成するかという点に関して、人々の意見は様々に分かれる z.b.精神疾患と身体疾患のアナロジー ※医学的比喩というものは、統計学的見解と同様、われわれの認識の枠を狭める。:14 →逸脱の発生源を個人の内部に位置づけ、こうして判定それ自体を現象の重要部分として捉えることを 阻む 1 現代社会の諸問題 ③構造機能主義的定義 一社会の全体、あるいはその特定領域の安定性を崩壊に導くプロセス z.b.社会の安定性を促進させる諸要素（機能）とそれを崩壊させる諸要素（逆機能） 問題点：社会あるいは社会集団にとって、何が機能的であり、何が逆機能的であるかを確定するのは、 理論上はともかくとして実践的には極めて困難 cf. Mertonの機能の定義（総結果の正味の差引勘定） ※いかなる規則が執行されるのか、どんな人々がレッテルを貼られるのかは政治的な問題 □逸脱と他者の反応 これまでの定義をまとめると、逸脱とはなんらかの合意にもとづく規則に対する違反であると定義され る →しかしこの見解は、逸脱に関する中心的事実、すなわち逸脱は社会によって生み出されるという事実 を無視している ☆ベッカーによる逸脱の定義 社会集団は、これを犯せば逸脱となるような規則をもうけ、それを特定の人々に適用し、彼らにアウトサ イダーのレッテルを貼ることによって、逸脱を生み出すのである。この観点からすれば、逸脱とは人間の 行為の性質ではなく して、むしろ、他者によってこの規則と制裁とが「違反者」に適用された結果なので ある。逸脱者とは首尾よくこのレッテルを貼られた人間のことであり、また、逸脱行動とは人々によって このレッテルを貼られた行動のことである。:17 ※逸脱とは、ある人間の行為に対する他者による反応の結果であり、逸脱の研究者は、逸脱者というレ ッテルを貼られた人々を研究する際、そのカテゴリーに、実際に規則違反をした人々を全て組み入れ られると仮定はできない。 ・逸脱者の共通点 逸脱者という