「らでぃ」レポート中央宝石研究所編.pdf

「らでぃ」レポート ～ 中央宝石研究所編 ① ～ 今回は、ダイヤモンドに人工的に色を付ける方法の一つとして利用されている放射線照射に ついて取材を行った。取材に答えていただいたのは、ダイヤモンドの品質や宝石の種類を示す 報告書を作る中央宝石研究所スタッフの堀川洋一氏だ。 ダイヤモンドができるまで また、ダイヤモンドを土の中から回収 株式会社 中央宝石研究所 する時にも、放射線が使われている場合 （CENTRAL GEM LABORATORY） ダイヤモンドは、天然で最も硬い物質 がある。ダイヤモンドは、エックス線を １９７０年(昭和４５年) ２月に設立 といわれ、宝石として身に付けるだけで 当てると蛍光を発する性質がある。これ され、宝石の鑑定、ダイヤモンド・グ なく工業など様々な分野で利用されてい を利用して、落下する鉱石にエックス線 レーディング業務、宝石学の研究と教 る。みなさんは、そんなダイヤモンドが を当て、蛍光を感知する装置がダイヤモ 育・出版活動、宝石器材の販売を行っ 自然の中でどうやって作られているかご ンドにタイミングを合わせて圧搾空気を ている組織だ。 存知だろうか。 吹き出し、ダイヤモンドだけを回収する ダイヤモンドのふるさとは、地球の内 という方法だ。 それまでも、宝石に放射線を当てる実 部深く百数十km も地下の場所で、とても 験は行われていたが、宝石に照射処理を 高い温度と高い圧力の世界だ。 放射線処理のはじまり 行い 「美しさ」という点を向上させたの 数億年もの間、地中の中に含まれる炭 は、イギリス人の科学者ウィリアム・ク 素(C)が、ドロドロに熔けたマントルの高 ルックス(Sir William Crookes)であるそ 地球上で最も多く取れるダイヤモンド 温高圧下でダイヤモンドに変化し、そこ うだ。中学校の理科実験で使うクルック は、褐色(暗い黄色)をしている。ふつう、 で育ったダイヤモンドはマグマの噴出等 ス管を発明した人物だ。実験は、褐色の ダイヤモンドというと透明で光り輝く石 によって急速なスピードで地上まで運ば ダイヤモンドを素材に選び、ラジウムに を想像するが、無色のダイヤモンドは れる。その後、冷えたマグマは、ダイヤ よるアルファ線をあてるものだった。す 「カラーレス」と呼ばれて、非常に数が モンド原石を含んだ「キンバーライト」 ると、ダイヤモンドは濃いグリーンに変