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数学教育における操作的活動と思考実験 小山正孝 (兵庫教育大学) を取り入れるねらい及び期待される効果は何か。 o.はじめに 1.[操作的活動J及び「思考実験Jを重視し 戦後のわが国の算数・数学教育は，菊池兵ーによれ 強調する背景 ば，学習指導要領の改訂に沿って.rS (Society)の 時代J.rM(Mathematics)の時代J.そしてrH(Human) 算数・数学教育で「操作的活動jが盛んに強調され の時代jへと移ってきている。すなわち，昭和26年の るようになったのは，昭和52年の学習指導要領改訂か 改訂においては「社会的な問題の解決を中核としてい らであり，一方.r思考実験」という用語が算数・数 る」ということからこの時代を rSの時代J.昭和33 学教育において用いられるようになったのは，今回昭 年の改訂においては「数学の系統性の重視や新しい数 和63年の改訂からである。そこでまず，ここでは，な 学教材の導入がおこなわれ，教材である数学に強調点 ぜこれら「操作的活動Jゃ「思考実験Jが重視され強 が置かれた」ということからこの時代を rMの時代J. 調されるようになったのか，その背景についてみてみ そして，昭和52年の改訂においては「人間としての児 よう。その際，便宜上，大きく二つの観点ー算数・数 童生徒に中心観点が置かれた」ということからこの時 学の「教育実践の観点」と「教育思想の観点」とに分 代をrHの時代」と呼べるであろう，というのである。1) けて，みていくことにする。 そして，近年のわが国の算数・数学教育では.Hの 1-1.算数・数学の教育実践の観点から 観点を基礎として，その上に sとMの観点の有機的結 まず，第一の観点である算数・数学の教育実践の観 合を図ろうとしている。このことは，換言すれば，平 点、から，その背景をみていこう。古藤怜は.今まで 林一栄町のいう「ヒューマニズム」と「リアリズムJ の数学科の授業は，教師側の一方的な説明や，教師主 と「アカデミズムJの三つの数学教育思想を，算数・ 導の問答形式で進められる傾向が強かった〉という反 数学教育において統合しようとしている，ということ 省に基づいて.数学科の学習で生徒に真の理解をう もできょう。というのは，現在わが国では学習指導要 ながすーっの方途として，小学校のみならず，中学校・ 領が改訂されつつあるが，それに先立つて昭和62年12 高等学校の指導においても“操作活動が重要である 月24日に公表された，教育課程審議会の「教育課程の こと全主張したい))(p.87) と述べている。 基準の改善J(答申)の中の算数・数学科の「改善の また，平林は. r操作的活動」プームの刺激となっ 基本方針」に，このような基本的な姿勢が示されてい たのは，昭和52年に改訂された学習指導要領に「具体 ると捉えられるからである。 的な操作を通して」ということが明示されたことにあ ところで，本稿の目的は，数学教育思想に関わる広 ると指摘し，さらに.r操作的活動Jが，今日の算数 範な議論を展開することではなく，上記の答申にみら 教育で重視されるようになったのは，このような算数 れる〈児童生徒の発達段階に応じた具体的