現代において「デッサン」とは「技法」なのか？ 稲賀 繁美.pdf

『あいだ』162号、2009年7月20日、33－39頁 あいだのすみっこ不定期漫遊連載　第68回　 　 現代において「デッサン」とは「技法」なのか？ 　　――そうでないなら,「デッサン」には，いかなる 　　可能性があるのだろうか？ 稲賀 繁美 （いなが しげみ／国際日本文化研究センター， 　　　　　　　　 総合研究大学院大学） 　拙稿に対して，以下のような貴重なご意 てしまった」とされ，にもかかわらず，ゲイダイ 見を頂戴しました。今回は、これについて に入学するために「無意味」な「技法」の「訓練」 考えてみたいと思います。なおこうした機 が「なお残存している」と指摘されています。そ 会は大歓迎です。一方的な情報提供と，勝 の「時代錯誤」は「極東の日本にあってさえ」(原 手気ままな意見の垂れ流しには，われなが 文「さえ」に傍点ルビ)「残存」しているのですから， らうんざりさせられるのですが，それは昨 世界各地，例えばフランスにも「残存」している， 今のこの国のマスコミ低落と，無責任な ということと思いました。 ネット・ブログの氾濫とも無縁ではないで 　私はこの部分を読んで少々うんざりしました。 しょう。「あいだ」はこの両者のあいだに 何故なら,「デッサン」は「技法」ではありません。 割ってはいり，新たな通路を確保し，意見 「訓練」かもしれませんが。また，今日の“現代 交換の広場（あごら）となるべき媒体でしょ 日本国”で受験生がゲイダイに入るために「訓練」 うから。なお，まったくトンチンカンな応 にいそしんでいる「技法」派「デッサン」とイコー 答になっている危惧もあり，その場合には ルではありません。その“現代的な技法”をたく 改めてご指摘を頂戴できれば幸いです。 みに身につけたのが，たとえば山口晃です。稲賀 さん程の方が，上のような単純な図式を用いてお 　……(160号）P37まんなかあたり，該当の展覧 られるのは，残念に思いました。 会には，ダヴィッドの裸体習作が出ている様子で， 　　　　　　　　　　　　　 （デッサン＝技法＝訓練） 「アカデミーの教程が要求していたデッサンと肉 付けの水準を遺憾なく納得させる。むしろ問題は， 　有益なご指摘をいただけたので，今回は こうした技法がまったく無意味になってしまった この点をすこし敷衍します。本文にみえる 今日なお，極東の日本あってさえ，ゲイダイに入 (1) (2) (3) というのがどこなのか，上の引 学するためには，同様の訓練が不可欠という時代 用からではわからないので，誤解があった 錯誤が残存している，という現実のほうだろう。 らすみません。 だが……」と続きます。　 　この (1) が (2) (3) と続くのかどうか判りません　「技法」に転落した「デッサン」 が,「デッサンと肉付け」を「技法」と位置づけ， 　まず,「デッサン」や「肉付け」が「技法」 その「技法」は，今日にあっては「無意味になっ かどうか，という論点ですが，これは立場