心理学教育における調査的面接技法の実践について.pdf

【一般論文】 87 心理学教育における調査的面接技法の実践について 西 村 太 志＊ 東亜大学 総合人間・文化学部 心理学研究室 E-mail: taishi＠toua-u. ac. jp 内 田 裕 之 東亜大学 総合人間・文化学部 心理学研究室 E-mail: uchida＠toua-u. ac. jp 原 夕 紀 東亜大学 総合人間・文化学部 心理学研究室 要 旨 本論文は，心理学における研究手法の一つである調査的面接技法について、心理学の研究法の初 学者を対象に演習を行った際の手法や工夫した点、結果のまとめ方などについて取り上げた。調査 的面接技法は、質問紙調査や実験的手法では得ることのできない、非言語的な対象者の反応や、時 間的流れの中での反応を測定することのできる手法であり、卒業研究などにおいても取られうる手 法として、心理学分野のみならず幅広く用いられるものである。本論文は特に、(1)心理学の研究 技法における面接法の位置づけ、(2)今年度心理学演習で実施した調査的面接法実習の内容、およ びそのノウハウ、(3)演習において実際に学生が行った結果のまとあ、ならびに資料としてのプレ ゼンテーションの仕方、について、次年度以降学習する学生の手引きとなりうる形でまとめたもの である。 ではなく、素朴な疑問、関心から人のこころの 1. はじめに 把握を行い、こころの仕組みを明らかにしょう とするのも心理学の一つの側面である。 心理学という学問領域が、哲学から派生する 例えば、我々は日常的に多くの人々と接し、 形でこの世に科学的側面を持つものとして誕生 様々なコミュニケーションを行う。その中に したのは、ドイツのウィルヘルム・ヴントがラ は、試験における面接のような非常に公的なも イプチッヒ大学に心理学実験室を開設した のから、親しい友人同士の秘密の会話のような 非常に私的なものまで多種多様である。また、 1879年である。それ以来120余年の間に、心 理学の研究は急速に進歩し、多くの研究知見の 人間は言葉を介して他者と意思伝達を行うこと 蓄積が多くの研究者によって行われてきた。そ ができ、そのことによって社会性の発達を成し の中には、最先端の科学技術を用いて、脳の仕 遂げていることを考えるならば、言語を介した 組みと意識状態の把握を行うようなものもある 様々なやりとりこそが、心理的な変化の表象を (詳細は藤原，2005を参照)。しかしながら、 明らかにするために、非常に重要な要素である そのような最先端の技術だけが心理学のすべて と考えることができる。また、コミュニケー 東亜大学 総合人間・文化学部『総合人間科学』第6巻2006年3月，pp. 87-95 88 西村太志・内田裕之・原 夕紀 ションには言語的な要素のみならず、非言語的 特定の目的をもって直接顔を合わせ、主として