熊本大学学術リポジトリ kumamoto university repository.pdf

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熊本大学学術リポジトリ Title 九州の縄文時代後晩期における石刃流通 : 鈴桶型石刃技 法について Author(s)神川, めぐみ Citation熊本大学社会文化研究, 6: 151-167 Issue date2008-03-14 Type Departmental Bulletin Paper URL /2298/10130 Right 熊本大学社会文化研究6(2008) 151 九州の縄文時代後晩期における石刃流通 一鈴桶型石刃技法について- 神川めぐみ 1.はじめに 九州の縄文時代後晩期には、「鈴桶型石刃技法(以下「鈴桶技法」とする)」という石刃製作技法が 盛行する。この技法は、石刃技法の中でも薄くて長い石刃を得ることができる両設打面を採用してい る点から見て、製作技術面において非常に効率的な技法であったといえる。結果的に生産された石刃 は、非常に規格性の高いものとなっている(第1図)。これらの石刃は、剥片錐をはじめとした様々 な剥片石器の素材として利用されたと考えられている。 本技法は、西北九州における良質な黒曜石の産地である佐賀県伊万里市の腰岳の中腹に立地する鈴 桶遺跡の発掘資料をもとに提唱されたものである。腰岳中腹には鈴桶遺跡をはじめとして数箇所の石 刃生産遺跡が存在するが、これらの遺跡からは生活財である土器、石鍍やその他の石器(製品)が出 土せず、本技法に関連する石核や調整剥片、その産物である石刃のみが出士する。これとは対照的に、 九州各地の同時期の遺跡には、若干の石核類を伴う遺跡も存在するが、主に石刃やそれらを加工した 剥片石器のみが出土している(1)。それらの石材には、ほぼ腰岳産黒曜石が使用されていることから、 これらが腰岳中腹に立地する生産遺跡から石刃の形態で供給されたものと推定されている。 このような旧石器時代以外の石刃技法は、我が国では東北地方の一部を除いて発見されておらず、 縄文時代の剥片剥離生産技術において、列島的に見ても特殊なものであることがわかる。また、良質 石材とそれによって製作された製品が一元的に生産され、各地へ流通するという現象は、縄文社会に おいて普遍的なものではない。よって、この鈴桶型石刃技法による石刃およびその製品の生産と供給 のシステムを解明することは、九州縄文時代後期・晩期の社会の集落や集団の関係を探る上できわめ て重要といえる。  ̄ 2.鈴桶技法に対する研究経過と課題 (1)技法の提唱と展開 鈴桶技法が提唱されるきっかけとなったのは、 1961年の日本考古学協会西北九州総合調査特別委員 会(明治大学考古学研究室)による鈴桶遺跡の発掘 ! 調査である。この調査成果として1965年に杉原荘介、 △ 戸沢充則、横田義章によって“九州における特殊な 010cm  ̄----- △△ 刃器技法,,として提唱されたのが「鈴桶型刃器技 法」であった(杉原ほか1965)。技法の提唱ととも 第1図鈴桶型石刃(鈴桶遺跡出土) 152

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