『刺青』から谷崎润一郎文学の美と悪を见る.doc

『刺青』から谷崎潤一郎文学の美と悪を見る ?王璐 序　　論 谷崎潤一郎氏（1886－1956）は、反自然主義の立場から徹底して官能美を求める作家である。谷崎潤一郎氏は長い間、性への追求、母性への憧憬，女性崇拝を自分の創作のモチーフとしていたのである。1910年に谷崎潤一郎氏の『刺青』が第二号「新思潮」に発表されており、永井荷風氏らから好評を博した。その後、谷崎潤一郎氏は耽美派としての作家活動を開始してきた。谷崎潤一郎氏は耽美主義の代表作家の一人として、永井荷風氏(注1)や佐藤春夫氏(注2)などのような現実批判精神を持っていないが、ずっと女性の美を描くことにおぼれていて、病的な執着を表している。彼は芸術が道徳への功利性をはっきり排斥しており、堅苦しい教訓を拒否しており、文学がある道徳、あるいは感情上の情報を伝達するものだけでないと思っていた。氏は美というものが文学芸術の本質だと思っているから、ひたすら作品の中に芸術の美を求めている。ただし、彼の美学意識は官能の享楽を追求するのを最高境界としたのである。氏の作品の中に描かれた女性がすべて自分のきれいな胴体で男性を征服する「悪」の化身である。そこに、悪は即ち善であり、醜は即ち美であり、美と醜とは離れにくい。みにくい屍骸がきれいな桜の木の下に埋められたように、互いに依存し合っているといえるであろう。「悪さ」と「醜さ」を認めることは「美さ」と「善さ」を賛美するのである。谷崎潤一郎氏は自分のユニークな文学醜意識を倦まずたゆまず築いている。社会道徳や倫理などの伝統価値死亡のところで生存の意義を考えている。それは読者に強く震い動かしている。私にとっては谷崎潤一郎とその文学作品は迷宮のようである。『刺青』は氏の処女作として、この迷宮の入り口だと言えるであろう。ですから、私は『刺青』から氏の文学の美と悪を尋ねてみようと思う。 　　　　　　　　　　　　　　 本　　論 一．谷崎潤一郎氏についての紹介する　 谷崎潤一郎は明治19年（1886）年七月二十四日、東京市日本橋区に生まれた。幼年時代は比較的裕福に乳母日傘で過ごし、阪本小学校に入学。そこで稲葉先生の薫陶に浴し,文学の道に導かれた。府立第一中学校の二年の時、父が事業に失敗し、築地精養軒の主人北村家に書生兼家庭教師として住み込む。第一高等学校を経て、東京帝国大学分科に入学。明治三四年九月、第二次『新思潮』を創刊。『刺青』と『麒麟』を発表した。 以後は「悪魔」、「人魚の嘆き」、「異端者の悲しみ」など、強烈な色彩と翳りのない華麗な作風で官能的な唯美的な作品を書き、悪魔主義とも称されたが、常に耽美派の第一人として活躍した。大正六年五月、母を失う。その悲しみの中に綴った「母を恋ふる記」に描かれた母性憧憬の情は、その後の谷崎文学の中の深く底流することとなる。大正十月三日、千代夫人をめぐるトラブルから佐藤春夫と絶交、いわゆる小田原事件（注3）である。大正十二年九月、関東大震災を契機に関西へ移住し、『痴人の愛』により前半生の作風に締めくくりをつけると、以後は作風を一変し、関西に残る伝統的文化感化を多分に受けた『卍』、『蓼食う虫』などを書いた。昭和五年八月、千代夫人と離婚。その後の数年間は生涯で最も充実した一時期で，『盲目物語』、『蘆刈』、『春琴抄』など古典主義的名作を次から次へど発表した。昭和十年一月、この時期の豊饒な谷崎文学をささえた森田松子と結婚した。その後は『源氏物語』の現代語を完成させ、長編小説『細雪』にとりかかり、昭和二三年五月に脱稿した。『少将滋幹の母』、『鍵』、『夢の浮橋』、『瘋癲老人日記』など,戦後もその旺盛な創作力は少し衰えることなく、昭和四十年七月三十日、明治、大正、昭和と長きにわたったその文学的生涯を閉じた。 二：耽美派の存在の背景と影響 １． 耽美派の存在の背景 耽美主義( たんびしゅぎ、aestheticism?唯美主義、審美主義とも) とは道徳功利性を廃して美の享受?形成に最高の価値を置く西欧の芸術思潮である。その時日本社会の背景は非常に複雑で、二つの戦争(注4)で続けて勝利を収めたので、日本の国内でこれまでになかった熱狂している挙動が出た．一方で、西欧文化を汲み取る歩調を速めていた。他方で、それをきっかけに国粋主義の思想は台頭した。そのため、幸徳秋水(注5)をはじめの社会主義者とアナーキズム者はさまざまな団体を結び付いて、その現象に反対した。そのため、大正社会は国家の政治、思想の分野における不安定な状況に置かれていた。そのため大正政府は鎮圧する手段をとった。1910年幸徳秋水などの人は逮捕される。政府はその機会を借り、知識人を抑えた。物質生活でも精神生活でもの自由がない状況で、たくさんの人は国家や政治に対して、絶望