新泻県中越地震における地震断层と地表変状の构造地质学的调査.doc

第4章　地質調査による活断層調査 4.1 新潟県中越地震における地震断層と地表変状の構造地質学的調査および地下水変動調査 豊島剛志1?小林健太1?岩下享平1?大塚洋之1?佐藤早苗2?氏原英敏2?大川直樹2?大橋聖和2?和田幸永1?小安孝幸1?小河原孝彦2?山本　亮4?渡部直喜3?立石雅昭2 1：新潟大学大学院，2：新潟大学積雪地域災害研究センター，3：新潟大学理学部，4：帝国石油株式会社 2004年新潟県中越地震の本震?余震域周辺地域において，構造地質学的視点から地表変状を観察し，地震断層探査を行った．また，地震に伴った地下の断層等の動きや環境変化をみるために，消雪井戸等の地下水変化の調査を行った． 中越地震の地質学的背景と中越地域の地質構造 　地震が発生した新潟県中越地域は，「新潟トレンド」と呼ばれる北北東-南南西方向に延びた地形（丘陵や平野，盆地）と地下構造（褶曲，断層，活断層，活褶曲）で特徴付けられる（図１，２）．このような特徴は，日本海東縁にも連続し，日本海東縁変動帯（平，2000）と呼ばれている（図１）．したがって，中越，下越地域は，日本海東縁変動帯が陸上に上がった部分であるとも言える．新潟地震（1964年），サハリン南西沖地震（1971年）日本海中部地震（1983年），北海道南西沖地震（1993年），ネフチェゴルスク地震（1995年）など，Ｍ７クラスの巨大地震がしばしば発生するゾーンの延長部に当たる． 　このような地帯の断層の中には，長い活動の歴史を持つものもたくさんある．それら断層の多くは，約2000万年前，日本海が開いた時に地殻が西北西-東南東方向に引き伸ばされたためにできた断層で，200-300万年前以降，逆に西北西-東南東方向に圧縮されて，逆に動き始めた（Tamaki et al., 1992；Okamura et al., 1995；平，2000）．この圧縮によって，新潟トレンドの活断層?活褶曲が活動を始め，同様の方向に延びる丘陵が隆起し，平野や盆地が形成された．その動きは現在も続いている（平，2000；平?岡村，2000など）．このようにしてできた丘陵の一つが魚沼丘陵で，その地下に中越地震の本震?余震域がある．したがって，中越地震は，200-300万年前から続く丘陵隆起を引き起こした変動の一つとして捉えることができる． 　また，現在の地殻変動から見ると，中越地震の本震?余震域は，新潟から神戸にかけて北北東-南南西から北東-南西方向に延びる，国内有数の歪集中帯（新潟-神戸構造帯：Sagiya et al., 2000）の内部にある．この構造帯では，西北西-東南東方向の短縮量が大きく，その方向の圧縮によって，兵庫県南部地震や新潟地震など，Ｍ７以上の巨大地震が多数発生している（図１）． さらに，中越地震は，日本海東縁から新潟にかけての，北米プレート?ユーラシアプレート間の収束型プレート境界の新生（中村?小林，1983）に関連した変動であるという見方もできる．いずれにしても，中越地震は，起こるべくして起こった地震である． 図２　新潟県中越地震余震域における地質構造と地震断層候補（確実度は低い）の分布．褶曲?断層を示すベースマップとして，日本油田?ガス田図No.13「新潟県中部地域」，5万分の1地質図幅「長岡」，「小千谷」，「岡野町」，新潟県地質図（2003年版20万分の1），活断層詳細デジタルマップを使用した． 　 中越地震に伴う地震動災害 　中越地震によって，亀裂，陥没，隆起，地すべり，重力性の崩落，噴砂など，様々な地表変状が生じた．これらのほとんどが地震動に伴った破壊や重力性の構造である．重力性の崩落，地すべりに伴って形成したと考えられる西傾斜の逆断層も認められる（図２，３a）．過去の断層面を使い，地震に伴って大規模な地すべりが発生している場合もある（図３b, c）． 図３　地震に伴って発生した地すべりおよび重力性の崩落．a：栃尾市半蔵金地区の道路をずらす逆断層．b，c：魚沼市旧広神村の田圃における大規模な重力性の崩落と地すべり．d：川口町荒谷東方の猪倉山断層付近における大規模な崩落 　小千谷市街には様々な地表変状が形成され，以下のような特徴が認められる（図４）． （1）若葉一丁目/土川での西北西?東南東方向の高速短縮（変位），若葉三丁目のマンホール抜け上がり（液状化）?マンホール外壁や自販機底面の“条線”（振動），GPS観測結果（隆起）などで代表される「振動?変位帯」が，小千谷市街を北北東?南南西に貫いている． （2）「振動?変位帯」が本震の震源断層に連なる可能性は低い．浅層地質（例えば，第三?四紀層中の小千谷向斜の東翼）に規制されて発生した二次的な“