第2节 中学生と高校生へ.doc

第５章　世代にみる友人選択の基準 第２節　中学生と高校生 この節では、中学生と高校生という友人関係が大きく広がり、また友人関係が重要性をもつといわれている時期を取り扱う。中学生、高校生の年代の友人関係に着目し、どのように発展していくのか、またそれによって彼らが手に入れるものは何なのか考察していく。 ●中学生と高校生の友人関係の違い 中学生と高校生では友人関係に対する考えが変わってくる。 青年期の友人関係のタイプとして次の６つがあげられる。①本音を出さない自己防衛的な付き合い方、②友達と同じようにしようとする同調的な付き合い方、③できるだけ多くの人と仲良くしていたいという全方向的な付き合い方、④被愛願望的付き合い方、⑤自己自信、⑥積極的相互理解である。 中学生では、自己防衛的なつきあい方と同調的な付き合い方が多くみられ、自分に自信を持った付き合い方はまだあまり見られない。そして同調的な付き合い方は女子に多くみられる一方で、男子は心の底では自分に自信がもてず自分の本音を外に出さないようにしている。ここから中学生は浅い付き合いが多いことがわかる。 また、高校生は多くの人と友人になろうとすると同時に友達に好かれ、理解されたいという願望を持って同性友人と付き合っている つまり、より深く友人と関わっていこうとするのが高校生の付き合い方の特徴である。 中学生では人に合わせて幅広く付き合うことが多いのに対し、高校生では、個人同士より親密につきあっていくという傾向がみられる。 　またグループでの付き合い方にも中学生と高校生で違いがみられる。心理学者の保坂亨は中学生と高校生の自発的に形成する友達グループをそれぞれチャム?グループ、ピア?グループと分類している。 保坂は「チャムとは、アメリカの精神分析家サリヴァンが提唱した概念であり、思春期以降、中学生頃から発生する親密で排他的な同性の仲間関係のことである。興味や関心を共有することから結びついたグループであって、互いの類似性?共通性を重要視し、グループへの同調傾向が強いことを特徴としている。 一方、ピアとは仲間という意味で、ピア?グループは高校生以上でよくみられる男女混合のグループである。互いの興味や関心が似通っているという共通性?類似性だけでなく、互いに異なる部分を持ち合わせていても、自他の違いを認め合いながら友人関係を育むという特徴がある」と述べている。 このことから年齢があがるについて友情は選択的、排他的になっていくということいえるだろう。成長するにつれて友人関係が選択され、より深くなると同時に、排他的でグループ外の者と付き合う機会はなくなることがわかる。 親しくなった者とは親密な関係を築けるのだが、新しく出会った者とはなかなか仲良くなりにくいということもいえる。つまり、この年代の友人関係は親密性とともに排他的側面があることがうかがえる。 男子と女子の友人観の違い また、この年代では男女間で友人に対する付き合い方も変わってくる。たとえば男子は外で一緒に遊ぶという付き合い方に対し、女子は手紙を交換したり、一緒に登下校をしたりして、自分たちの仲のよさを確認しあうような親密な行動をとることが多いとされる。 このようなことから男性の場合、友人は一緒に遊ぶ人を意味するが、女性の場合、秘密を打ち明けたり、精神的支えとなってくれる人を意味する。男子の場合、秘密を打ち明けるようなつきあいはあまりないのは、友達は自分とは異なる存在である、という前提があるからであり、一方、女子は心理的な一体性を求めるからいつも一緒に行動をともにするという傾向がみられる。また、女子は、たったひとりまたは数人の「親友」とのあいだに、情緒的で親密な関係を形成することに関心をもつ。男子と比べて女子は、情緒、親密さ、気が合うこと、満足度の点で、友情を高く評価している。 このことからこの年代は女子のほうが友達関係を重視している傾向にあるのではないかと考察する。 青年期での友人関係の位置づけ 今までみてきたとおり、中学生、高校生という青年期にとって、友人関係は重要な位置を占めていることがわかった。なぜ、青年期で友人関係は重視されるのだろうか。 青年期というのは規制の枠組みや規範をそのまま受け入れることに抵抗を覚えはじめ、そこから脱却し自立しようとする動きが顕著となる。強い共感を絆とした青年期の友人関係には、親や大人の影響力から脱してより開かれた新しい自己を確立するための大切な役割がある。不安定な青年の心の支えとなるのは同様の悩みをかかえる同年代の仲間との深い結びつきである。自立へのプロセスにおいて、共感と精神的安定をもたらす糧であり、この時期に友人?仲間からの影響力は大人からの影響力をしのぐのである。だからこそ青年期の友人関係