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第三者認証と「世界食品安全イニシアチブ（GFSI）」 鹿児島大学名誉教授 岡本嘉六 食品の安全性を確保するため、「法律による規則」と「民間取引における自 主規制」が機能している。日本を例にすると、「食品衛生法」によって施設、 機材?器具、原料、食品添加物等の化学物質、従業員などに関する衛生管理条 件が定められ、それを満たさないと営業は許可されず、食品衛生監視員による 監視?指導に従わなければならない。それに関係する物資の国際貿易に対応す るため「検疫」が行われ、「食品衛生法」を満たさないものは輸入禁止となる。 この「検疫」が国によって異なると貿易差別となり国際紛争に発展することか ら、SPS 協定（衛生と植物防疫のための措置）によって「国際基準」に準拠す ることとされ、それを定めているのがコーデックス委員会である。すなわち、 食品の安全性に関する各国の基準はコーデックス基準の枠内にあり、それを逸 脱すると世界貿易機関（WTO）に提訴される。 他方、「民間取引における自主規制」は国の基準（コーデックス基準）を満 たした業者間が行う商品取引についての慣行であり、そこには安全性?品質と 価格とのバランスが求められる。すなわち、「高度の安全性?品質」を備えた 商品は高額で取引され、コーデックス基準ぎりぎりの商品は安値で取引される。 それらの商品を購入する消費者は、業者が主張する高度の安全性?品質が本物 であるかどうかを判断しなければならないが、それは取引業者も同じである。 「高度の安全性?品質」を備えているかどうかを、取引に関係のない第三者 が判定して認証する仕組みが出来上がっている。それが国際標準化機構 （ISO） であり、電機分野や工業分野における規格を統一することによって貿易の技術 的障害を取り除くことを目的とする民間機関であるが、その統一規格を各国で 同等なものとするため国の間で相互認証協定が結ばれ、日本でも「工業標準化 法」に基づき日本工業（JIS）規格などが設けられている。取引に用いる重さや 長さなどは JIS 規格の計測器を使用することが「計量法」で定められている。 すなわち、国際標準化機構は民間組織であるが、それが設定したISO 統一規格 は各国で法律に基づいて順守すべきこととされている。 ところが農業分野に関してはウルグアイ?ラウンド交渉が長引き、1994 年 にようやく妥結し、自由貿易が始まったが、安全性や品質に関わるコーデック ス基準はあるものの、商取引に用いる統一規格が存在しなかった。当初、工業 分野の品質管理システム（ISO9000）を準用したが、食料生産?加工?流通に おける特殊性をカバー仕切れないため、国際標準化機構とは別に流通業界組織 が認証システムを開発し始めた。それが米国圏で誕生した SQF （Safe Quality - 1 - Food）や欧州で小売業組合が創設したGLOBALG.A.P.などである。その後2005 年に食品安全管理システムとしてISO22000 ができあがり、SQF （Safe Quality Food）やGLOBALG.A.P.などもそれに準拠することとなった。しかし、その間 に無数の第三者認証システムが乱立し、流通業者や消費者がどれを信用してよ いか分からない状態になってしまった。適格で適正な第三者認証ではない「ま がいもの」が横行する状況に対して、ISO22000 に準拠した第三者認証システム を特定することが必要となった。 その作業を行ったのは 2000 年 4 月に発足した世界食品安全イニシアチブ （GFSI）であり、世界の流通業界大手が設置した消費財フォーラム（CGF）が運 営している。ISO22000 に準拠した認証規格体系（scheme）を保有する第三者 認証システムであるかどうかを、専門家を集めて審査し、絞り込んだ（GFSI 日 本）。 審査の結果、国際取引に使用できる第三者認証システムとして次の 10 社が 承認されている。これらの10 社は、ISO22000 に準拠している国際標準化機構 に準じる認定機関であり、生産?流通企業がそれらの認証規格体系（scheme） を満たしていることを認証する組織を抱えている。それは、国際標準化機構が 日本適合性認定協会（JAB）のように各国に一つの認定機関を設けているのと