シンクロサイクロトロンの周波数広帯域無同調型高周波加速装置の可能.pdfVIP

The 14th Symposium on Accelerator Science and Technology, Tsukuba, Japan, November 2003 シンクロサイクロトロンの周波数広帯域無同調型高周波加速装置の可能性 佳元壮一郎 大阪大学核物理研究センター 〒567-0047 大阪府茨木市美穂ヶ丘 10-1 概要 する、サイクロトロンの高周波加速空洞と増幅器間のカッ プリング回路を、トランスで模擬したときの、単一の橋絡 並列 LCR 共振回路を橋絡 T 字型全域通過網回路(以下橋 T 回路の性能を、弱電回路によるモデルで検証することに 絡 T 回路) に組込むと、共振周波数が時間的に一定であるに した。 も拘らず、この共振回路の両端に発生する電圧は周波数帯 域特性を示す。橋絡 T 回路のこの特性を活用して、固定周 2 橋絡T 字型全域通過網の原理 波数のサイクロトロンのための高周波加速空洞に組込ん で、加速電圧に周波数帯域特性を持たせることにより、シ 橋絡 T 回路は、図１のような回路である。これらの回路 ンクロサイクロトロンのための高周波加速装置として、高 網はキルヒホッフの法則を用いて定式化することが出来 電力、周波数掃引の繰返しの速い、高周波加速装置の開発 る。回路網のインピーダンスと電圧の関係式と全域通過の 研究に取組んでいる。その研究の第一段階目として、加速 条件 V=IR から、一定値R になるようにインピーダンスを 電圧を昇圧する、サイクロトロンの高周波空洞と増幅器間 定めると、以下のような特殊な条件が導き出される。 のカップリング回路を、トランスで模擬したときの、弱電 Z 2 = R 2 , Z 3 = 4 Z 1 (1) 回路のモデルを製作し、各部の電圧電流特性の測定を行っ 2 Z 1 た。本論文では、その測定に基づいて、新たな方式による すなわち、これを満たせば、この回路全体の入力インピ 可能性と問題点について報告する。 ーダンスは加速周波数に依らず抵抗 R となり、インピーダ ンスマッチングが実現でき、市販の高周波増幅器で励振可 1 序論 能である。さらに、(1)の条件の下で、図１のインピーダン ス Z1 を並列 LC 共振回路としたとき、入力電圧 V に対す シンクロサイクロトロンは、時間的に一定の磁場の下で、 荷電粒子の周回周波数が軌道半径の増加に従い変化する る、加速ギャップにあらわれる電圧(加速電圧) との比と、 ように磁場分布を定め、それに高周波加速周波数を変調さ 加速周波数の関係は図２のように広帯域特性を示す。従っ せ、同期加速する加速器であり、磁場を最外周まで利用で て、入力側の周波数を変化させると、加速電圧側の周波数 きるので、加速エネルギーを、サイクロトロンよりも、高 も変化させることができる。 また、この橋絡T 回路は同調型のような共振回路の共振 く出来ると言う特長を持つ。 周波数を変えて、粒子の周回周波数に同調させるような複 この加速器は 1940 年代にかけて弱集束サイクロトロン の高エネルギー化の目的で一時期建