第一世代天体から原始銀河に至る宇宙暗黒時代の解明ProbingtheDark.pdfVIP

平成２０年度採択分 平成２３年４月５日現在 第一世代天体から原始銀河に至る宇宙暗黒時代の解明 Probing the Dark Age: From First Generation Objects to Primordial Galaxies 梅村 雅之 （UMEMURA MASAYUKI） 筑波大学?大学院数理物質科学研究科?教授 研究の概要 宇宙シミュレータ FIRST を用い，輻射流体力学と高精度Ｎ体計算によって，宇宙第一世代天体 形成から原始銀河形成に至る宇宙史，特に第一世代天体における星形成過程，原始銀河からの 電離紫外線光子の脱出と宇宙再電離，ライマンアルファ輝線天体の宇宙論的モデルの構築，紫 外線輻射場内の球状星団形成，原始銀河における巨大ブラックホールの合体成長，について研 究の進展があり，今後の研究推進の基盤を形成した。 研 究 分 野 ：数物系科学（理論天文学） 科研費の分科?細目 ：天文学?天文学（4201） キ ー ワ ー ド：宇宙物理，第一世代天体，銀河形成，宇宙暗黒時代，並列計算機 １．研究開始当初の背景 ４．これまでの成果 遠方宇宙の観測は，宇宙暗黒時代の終わり これまで，1) 第一世代天体形成と連続的星 である宇宙再電離期に迫ろうとしており，ま 形成，2) 原始銀河形成と紫外線輻射輸送計算， たこれまでの理論的取り組みにより宇宙第 3) 宇宙論的ライマンアルファ輝線天体モデ 一世代天体形成の物理について多くの理解 ルの構築，4) 紫外線輻射場内の球状星団形成， が得られてきている。しかしながら，第一世 5) 原始銀河における巨大ブラックホールの 代天体形成の後，どのような進化を経て原始 合体成長，で重要な進展があった。 銀河が誕生し，宇宙が再電離されるに至った 課題 1)では，ダークマター?カスプの重力 かという宇宙暗黒時代の宇宙史の多くはま ポテンシャルが，ビリアル温度を上昇させ， だ謎に包まれたままである。 その結果水素分子冷却の熱的不安定を引き 起こすことで従来の計算で求められていた ２．研究の目的 質量より 2 桁近く小質量の天体形成が可能に 本計画は，特別推進研究（H14-H19）に なることを明らかにした。また，引き続く星 より開発?製作した融合型並列計算機“宇宙 形成過程を調べるために，初代星からの紫外 シミュレータ FIRST を用い，大規模輻射流 線輻射を入れた輻射流体シミュレーション 体力学計算によって得られた宇宙第一世代 を行った。この計算によって，初代星質量が 天体に関する新たな成果を基にして，宇宙第 25-40 太陽質量以上では，連続的星形成が可 一世代天体形成に引き続いて起こる原始銀 能となり，これ以下では解離光子による星形 河形成までの物理過程を明らかにし，いまだ 成阻害が起こることを明らかにした。また， 解明されていない宇宙暗黒時代の宇宙史の 電離波面の伝播によって，ガス雲がはぎ取ら 物理的解明を目指す。 れると，第二世代の星質量は 20 太陽質量近 くまで減少することを見出した。 ３．研究の方法