プロジェクト研究部 超エンタルピー流動研究分野 Ulra-High-Enthalpy Flw.pdfVIP

流体融合研究センター プロジェクト研究部 超高エンタルピー流動研究分野 Targeted Research Division, Transdisciplinary Fluid Ultra-High-Enthalpy Flow Laboratory Integration Research Center （兼）教 授 大林 茂 原子や分子を電離させるような大きなエネルギーを「流れ」のエネルギーにするにはど うしたらいいか？さらに、そのような「速く」て「熱い」流れはどのような性質を持って いるのか？そしてそれは何に利用できるのか？これが我々の基本的な研究テーマである。 計算機に 100MJ/kg と入力するのは簡単であるが、実験室にてそのような超高エンタルピ ー流れを作り出すことは容易ではない。我々は現在、レーザー、火薬、圧縮性気体、放電 などを用いて超高エンタルピー流を発生させ、衝撃波、非定常圧縮性流体力学の本質的現 象の解明と非化学宇宙推進、地球及び惑星の大気圏突入、高圧による材料表面の改質など の応用を模索している。「流動」は無数と言ってよいくらい大きな自由度を持つ系の象徴で ある。超高エンタルピー流動の研究でも、現象や応用に「唯一」の答えがあるわけではな い。それに向き合う者が、何を感じ、理解し、どんな機能を「創造」するかということが、 特に大切だと考えている。 レ ー ザ ー 駆 動 管 内 加 速 装 置 （Laser-Driven In-Tube Accelerator, LITA） 本装置は、管内に推進剤（気体）を詰め てレーザーのエネルギーで物体を打上げ るもので、当研究室で考案された。レーザ ー光によって遠隔的にエネルギーを供給 するだけでなく、推進剤を飛行体に搭載す る必要がないため、飛躍的に大きなペイロ ード搭載が可能である。また、推進剤は何 回でも再使用可能であるため、これまでよ りも格段に低コストでの打上げが実現で きる。また、管壁による閉じ込め効果によ って、推力が開放空間作動よりも約2倍に LITA プロジェクタイル垂直打上げ 向上している。将来、宇宙エレベータの駆 動装置などへの応用が期待できる。 衝撃波を伴う流動とインパルス生成 レーザーによって一定量の気体に一定のエネルギーを投入する。このとき発生する衝撃 波（ブラスト波）とその背後の流れによってもたらされるインパルス（力積）は、気体の 音速に反比例する。これは、非粘性流体の相似性、衝撃波の性質から説明することができ る。実際にレーザーを吸収するプロセスは単純ではなく、下図の例では、レーザーを吸収 したプラズマ領域はだるまのような形をなし、それに駆動されるブラスト波の挙動もその 影響を受けている。重い気体を使 うとインパルスが増えるのは、非常に有用。ちなみに、 気体よりも重い媒質、たとえば水を用いれば、金属材料の表面改質ができるような高圧 （0.2J のレーザーエネルギーで2 万気圧程度）を発生させることもできる。 放物面で反射したレーザー光によって駆動された衝撃波とプラズマ 超軌道速度大気圏突入カプセル周り の流動シミュレーション実験 圧縮性流体の非定常膨張を利用した「イ クスパンション管」を用いると、試験気体 を淀ませ高温にすることなく、高速まで加 速することができる。右図は、2007 年に帰 還予定の小惑星サンプルリターンミッショ ン「はやぶさ」が、大気圏に突入するとき の流れを実験室で模擬したものである。衝 宇宙科学研究所「はやぶさ」大気圏再突入カ 撃層内は、輻射を伴う 1 万度以上の高温状 プセル周り流れの実験室シミュレーション 態になっている。