家庭教育の方法とその内容についての一考察.pdfVIP

- 1 - 豊かな人間性を培う家庭教育の在り方 - 家庭教育の方法とその内容についての一考察 - 指導主事 高 崎 隆 一 Takasaki Ryuuichi 要 旨 本研究は、法律学及び脳科学の視点から「豊かな人間性とは何か 、また「豊かな人間性を」 培う家庭教育の在り方」について考察するとともに、その成果を生かした具体的な家庭教育の 展開例を開発するものである。 キーワード： 法律学、脳科学、コミュニケーション、調理、家族 １ はじめに 脳科学の成果（脳機能発達に関与するヒト脳の情報処理様式の解明）が医学、社会福祉分野及び教 育等の異分野領域へ転移されつつある。この成果を家庭教育の方法とその内容に生かすことより、家 庭教育の充実を図りたい。 そこで、本研究は「なぜ、脳科学の視点が家庭教育に必要なのか 、また「家族がその成果を享受」 するために、どのような行為が必要なのか」を明らかにする。 ２ 研究目的 豊かな人間性を培う家庭教育に関する方法とその内容を明らかにする。 ３ 研究方法 (1) 文献を通じて、家庭教育の方法を明らかにする。 (2) 文献を通じて、家庭教育の内容を明らかにする。 (3) 脳の活性化に関する事例を分析する。 (4) 豊かな人間性を培う家庭教育の展開例を開発する。 ４ 研究結果 (1) 法律学及び脳科学の成果と家庭教育の方法 本研究の対象は「豊かな人間性」とそれを培う「家庭教育の在り方」である。まず、法律学及び脳科 学を視点として 「豊かな人間性」について考察し、続いて家庭教育の方法について論じる。、 、 「 、 、 。」 、 、佐藤幸治氏は 人間性について 今日 人権の観念をもって 人間性が語られる と言及し また 人権の観念を「人格的自律の存在として自己を主張し、そのような存在であり続ける上で、不可欠な権 利」と定義している。このような考え方は、家族、社会経済及び国家の在り方について考えるうえで、 基本となるものである。また、人間は様々な社会経済的諸条件のもと、その関係する様々な人間及び集 団とのコミュニケーションを通じて、幸福を追求してきた。この幸福を追求するあり様に、人間性を見 - 2 - いだすことができる。近代立憲主義における人間とは、自らの生き方は自らが決定することに、人間と しての幸福があり、人権の獲得に努力する個人が措定された。また、現代立憲主義における人間は、人 権を相互に尊重して生活を営む個人に、豊かな人間性を見いだしている。豊かな人間性とは 「他者と、 のコミュニケーションを通じて、多様な情報を獲得するとともに、その情報をもとに思考し、人権を相 互に尊重して生活を営む個人」を内実とする。 豊かな人間性を培うとは、コミュニケーション、思考等を助長? 維持することである。これらを学習によって、培う方法が開発され た。この方法を開発した分野が脳科学である。前頭葉(図１)に、豊 かな人間性と関連する機能が存在する。この前頭葉を構成している 前頭前野に関する以下の機能が、川島隆太氏(東北大学教授)の研究 により明らかになった。 ○コミュニケーション ○情動の制御 ○思考 ○意識?注意の集中 ○注意の分散 ○意思の決定 ○記憶のコントロール ○行動の抑制 ○創造 人格的自律の存在である人間にとって 前頭前野は大切な役割を担っている 脳科学の視点から な、 。 、「 ぜ、前頭前野の機能を活性化(助長?維持)させなくてはならないのか」について、川島隆太氏は、前頭 前野の機能が低下した場合、社会生活上、以下のような課題が生じると指摘している。 ○家族ときちんとコミュニケーションができない。 ○身辺自立能力が失われていく。 ○行動や情動を制御できなくなり社会性がなくなる。 社会では行為(利害)を相互に調整する必要がある場合、一定のコミュニケーションの必要性がうまれ る。個人の幸福(欲求)を充足するという目的で行為を効果的に調整するために、前頭前野の機能の活性 化が必要である。そこで、脳科学の成果を教育に生かすことができれば、豊かな人間性を培うことがで きると筆者は考える。では、どのような方法で、前頭前野を活性化させることができるのであろうか。 川島隆太氏は 近赤外計測装置(図３)を使って 子どもたちの脳の前頭前野がどのような場合に 活、 、 、「 発に働くのか」を明らかにし、その計測結果から以下の結論を得ている。 ○子どもの前頭前野は、自分の親と話している場合に、大いに活性化する。 子どもは、自分の親と話している場合、言葉の裏にある感情なども読み取る非言語コミュニケーショ ンに関連した右側の前頭前野の働きも活発になることが明らかになっている。反対に、知らない他人と 、 、 、 。話をした場合 照れな