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生涯学習社会における家庭教育、社会教育およびキャリア教育による人間形成 Human Formation by Home Education, Social Education and Career Education on Lifelong Learning Society 三和義武（Yoshitake MIWA） １．はじめに 本論では、家庭教育、社会教育そしてキャリア教育の視点から、現代における生涯学習 社会をとらえ、それぞれ三つの教育の役割を明確化し、現代社会において、個性的で創造 的、しかも時代の要請に応えた能力を獲得した人材を養成するために、どのような教育が 幼児期から人生の衰退期において必要なのかを検討していく。まず、家庭教育から観察す れば、従来の家庭教育は、学校教育にかなりの部分をまかせ、そこには、保護者の意識に 潜在する「教育は学校で行うもの」という認識が存在した。しかし、 2006（平成18）年の 教育基本法の改正により、法的にはその考えを大きく転換させることとなった。そこでは、 子どもの教育について、親に第一義的な責任があると明記され、親における子どもに対す る教育の重要性が増したのである。しかし、その現実をみると、法的整備を経ても実態と して理想的な教育環境にいたるには、多くの時間がかかるだろう。一方では、現代社会に おける核家族化や一人当たりの子どもの出生の減少から、母親は必然的にわが子に愛着心 を異常なまでにいだき、大切に育てる母親が増加する傾向にある。 次に、学校教育を経て、生涯学習という視座からも学校教育の終了後における第 3段階 の教育として社会教育などの充実が今まで以上に求められている。しかし、実際の現場に 目を向けると、たとえば大学現場においては、企業において高学歴という付加価値をつけ た大学院修了学生を必要とすることは少なく、米国のように大学院教育が仕事上のキャリ アアップに結びつくことは少ない。そのため、米国と異なり、日本においては、社会人学 生やパートタイム学生として、自らの能力を学校教育によって磨きをかけ、キャリアアッ プを図ろうとする人材は多いとはいえない。その意味では、生涯学習の発展に歯止めがか かっているといえる。 最後に、キャリア教育を取り上げれば、現在の学校教育現場においては、小学校から大 学までキャリア教育の導入が求められ、その実践的教育が行われている。しかし、キャリ ア教育が、就業や職業の枠組みから外れて、家庭教育や社会教育などを包含した人生の生 き方教育として確立していくには、根本的な生涯学習理論の転換が必要であろう。 ここでは、このような生涯学習の状況から、現代における生涯学習社会において、家庭 教育、社会教育、キャリア教育が社会とどのようなかかわりをもって、人間形成を行って いくかを考察していく。 －16－ ２．家庭教育から学校教育へ 家庭教育は、旧教育基本法の 7条において、「家庭教育及び勤労の場所その他社会におい て行われる教育は、国及び地方公共団体によって奨励されなければならない」と示されて いたが、2006（平成18）年における教育基本法の改正により、父母その他の保護者は、子 の教育について第一義的責任を有すると定義し、自立心を育成し、心身の調和のとれた発 達を図るよう努めるものとすると内容が変更された。また、国と地方公共団体においても、 家庭教育の支援のために必要な施策を講ずることが示されている。さらに、幼児期の教育 についても、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その 他適当な方法によって、その振興に努めなければならないとし、幼児期の教育が生涯にわ たる人格形成の基礎を培う重要なものであることを重視している。 ここで、教育基本法について旧法と新法の比較を行うと、旧法では、 7条の社会教育のな かに家庭教育が含まれていたが、新法により家庭教育が独立し、 10条1項において、「父母 その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために 必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図る よう努めるものとする」とし、10条2項では、「国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性 を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するた めに必要な施策を講ずるよう努めなければならない」と家庭教育の項を新設している。幼 児期の教育では 11条で、「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なも のであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環 境の整備その他適当な方法に