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6 2 J U N - - - - J U L 2 0 1 2 6 3J U N - - - - J U L 2 0 1 2 グローバル時代を迎え、日本では ダイバーシティの議論が盛んです。 しかしそれは、根本的な部分の議論 を伴ったものでしょうか。私には異 質な人々が入ってくること、異質な 国へ行って仕事をすることへの恐れ ばかりが先行し、チャンスをチャン スとしてとらえられないでいる企業 や個人が多いように思えます。今回 は本質的なダイバーシティとはどう いうものか、中国古典を読みつつ考 えていきます。 「陰陽」から 多様性を認識する 名無し、天地の始 はじめ には。名有れ、 萬物の母にこそ。（老子） 宇宙の根源である道は天地をまず 作り、次に万物を作ったという意味 の言葉です。私たちは天と地の間に 住み、万物のなかの一員です。日本 の自然観は自然に神を感じ、道端の 木や石のなかにも神を見てきました。 その観点を突き詰めていけば、生き とし生けるものすべてを同等に見る 精神を持っていたはずですが、西欧 化の途中でその心をどこかに取り落 としてしまったかのようです。 まずは冷静になって、自分が暮ら す時代と空間を見つめ直すことです。 自分たちが宇宙の広がりのなか、地 球上で生きている現実をしっかりと 受け止めましょう。私たちは地球上 で活動し、したがって取引する相手 は決して日本に限定されず、地球上 の人間なのだという事実を認識する ことからすべては始まります。 中国ではこの世のすべては「陰」 と「陽」で成り立っていると考えま す。それも「陰」と「陽」だけでな く、「陰」のなかにはさらに「陰陰」 あり、「陰陽」あり。中国哲学と宇 宙観の書である『易経』では、もっ Text = 千葉 望 Photo = 鈴木慶子、新井啓太（書画） 田口佳史 氏 Taguchi Yoshifumi_東洋思想研究 者。株式会社イメージプラン代表取 締役社長。老荘思想的経営論「タオ? マネジメント」を掲げ、これまで 2000社にわたる企業を変革指導。 また官公庁、地方自治体、教育機関 などへの講演、講義も多く、1万名 を超える社会人教育実績がある。最 近の著書に『孫子の至言』（2012年 光文社）、『リーダーの指針　東洋思 考』（2011年かんき出版）、『老子の 無言』（2011年光文社）、『論語の一 言』（2010年 同）。2008年には日 本の伝統である家庭教育再興のため 「親子で学ぶ人間の基本」（DVD全 12巻）を完成させた。 人事の哲学 大転換期を支える中国古典の智 第二十話 ダイバーシティが本格化し、国内の職場にも 外国人が配属されることになった。 現場のマネジメントで、心がけるべきこととは。 6 2 J U N - - - - J U L 2 0 1 2 6 3J U N - - - - J U L 2 0 1 2 と細かく分かれ、「陰陰陰」「陰陰陽」 「陰陽陽」というふうに「六四卦」、 すなわち64に分類されるほど多様性 に富んでいます。この世を注意深く 観察し、陰陽という成り立ちに気づ き細かく分類したことで、古代の中 国人は「この世は多様である」「多様 なのがこの世? と認識していました。 自分を「陽」だと思っている人の なかにも「陰」が存在します。自分 のなかに既に異質なものがある。そ れなら異質な人、ものを受け入れる ことを恐れてはならない。まさにダ イバーシティの考え方を先取りして いたといえます。 水の心で 相手に浸透しよう 大同にして小同と異なる、此 これ を之 こ れ小同異と謂 い ふ。萬物 畢 ことごと く同じく 畢く異なる、此を之れ大同異と謂ふ。 （荘子） 「大同小異」という言葉は日本人に もおなじみです。同じという視点か ら見ればすべて同じことが、「まっ たく違う」という視点から見ればこ とごとく違うように思えるもの。自 分がどのような視点を持つかが重要 なのです。たとえば社内に外国人が になること。肩の力を抜いて柔軟な 心を持ち、水のように形を変えてど こへでも浸透していくことが求めら れているからです。私には今の日本 人の心が少し硬くなり、内にこもっ ているように思えます。やわらかな 心で愛情深く、収めることをよしと する。争わない。自分を無にしなが らも、さまざまな人材をどうすれば うまく活用できるか挑戦してみる。 自分たちが従来やってきた「型」に とらわれてはいけません。 一人ひとりの 個性を認めよう 人の生まるるや柔弱なり。其の死 するや堅强なり。（老子） 生まれたばかりの人間は柔軟でエ ネルギーに満ちています。発想が硬 いということは、死の一歩手前だと いう意味