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大学教育の分野別質保証のための教育課程編成上の参照基準 哲学分野 日本学術会議大学教育の分野別質保証推進委員会 哲学分野の参照基準検討分科会 担当学会 委員長 西村清和 （第一部会員） 國學院大學文学部教授 美学会 副委員長 藤原聖子 （第一部会員） 東京大学大学院人文社会系研究科准教授 宗教学会 幹事 小島毅 （連携会員） 東京大学大学院人文社会系研究科教授 中国学会 戸田山和久（第一部会員） 名古屋大学大学院情報科学研究科教授 哲学会 斎藤明 （連携会員） 東京大学大学院人文社会系研究科教授 印度学仏教学会 佐藤弘夫 （連携会員） 東北大学大学院文学研究科教授 日本思想史学会 羽生佐和子（連携会員） 国立研究開発法人理化学研究所理事 哲学会 河野哲也 （特任連携会員） 立教大学文学部教授 倫理学会 第22期の委員 鷲田清一 （連携会員） 大谷大学文学部教授 手島勲矢 （連携会員） 京都大学非常勤講師 1 １ はじめに （2以下の本文が確定した後に作成する予定） ２ 哲学の定義 「哲学」はその語源「Philosophia（愛知）」からもわかるとおり、元来「知」の全体を対象 としたものであり、その意味では「学問」そのものを意味していた。それゆえ最も広い意味 で哲学を定義すれば、それは物事を成り立たせている原理を問い分析する営み、また物事に ついての我々の理解の基礎となる概念、あるいは我々の実践を支えている価値規範を、それ らの起源にさかのぼって問い直し、解釈し、批判的に再構成する営みである。そのために哲 学は「思考としての言語」を整え、これによって「論理的思考」や「批判的な思考」を鍛え るが、それはまた時代や文化や地域に根ざす多様な視点の相互理解と相互批判に基づく共感 や想像、そして対話とコミュニケーションの能力を養う。これを要するに、哲学の営みとは 「世界理解のフレームワークの構築」である。 哲学は特定の一学科目（ディシプリン）にとどまらない。近代科学が成立して以降の学問 の専門分化によって、他の諸学ではその内実が問われることのないまま自明の前提となって 研究活動を支えるいくつかの基礎概念を有するが、哲学はこのような基礎的な諸原理、基本 的な諸概念をあえて主題化し、その内実を問い、分析する。それゆえ哲学は、他のほとんど すべての思考や実践領域、したがって大学で教えられる他のすべての学問領域の基盤を提供 するものである。哲学が関わるべき基礎的な諸原理、諸概念には、「真、善、美、聖」といっ た基本的価値はもとより、存在、理性、精神、神、生、死、愛、時間?空間、因果性、自由、 意志、心身、知識、言語、科学、合理性、論理、意味、義務、解釈、歴史、ジェンダーなど がふくまれる。 欧米の大学では「哲学講座」の名の下に、哲学?倫理学?美学が研究?教育されるのがふ つうであるが、日本の大学では、明治維新以後西洋の文明?文化を移入するなかで、多くの ばあい哲学、倫理学、美学、宗教学などの関連講座がそれぞれ独立に設置され、それらが他 の「哲学系諸学科」とともに広い意味での「哲学科」を形成するという形がとられてきた。 これは当時の日本の特殊な歴史的事情によるが、他方で、欧米の大学とくらべてより広範な 思考と実践の多様な領域がふくまれる日本における「哲学科」のこうしたあり方は、以下の 理由から、広い意味での「哲学」の研究?教育により有利であるともいえる。 実際「世界理解のフレームワークの構築」という、広い意味での哲学は、西洋における狭 義の「哲学」の伝統にとどまらず、広く人間の思考や実践をカバーするものとして、人類の 歴史において数千年にわたって、しかも多様な文明?文化、歴史、伝統のなかで営まれてき た。日本でも、明治維新以前は儒教、仏教、神道にかかわる思想や実践の伝統をもち、西洋 の「哲学」が移入されたのちは、これらが哲学的思考や実践のなかに組みこまれることにな る。結果として、今日多くの大学では、哲学系の学科のもとに、西洋由来の哲学、倫理学、 美学、宗教学のみならず、中国哲学（中国思想）、インド哲学（インド思想?仏教学）、日本 思想史などがふくまれ、教えられることになっている。 2 ３ 哲学系諸学の定義と固有の特性 上記のように日本の大学の哲学教育?研究は広範かつ多様であるため、これを８分野に分 けてそれぞれの定義と特性を述べる。この分類は学会組織の区分として定着しているものだ が、現在の大学では、それぞれの教育目的?カリキュラム体系に合わせた他の呼称が使用さ