現場で働く指導医のための医学教育学プログラム.pdfVIP

2016年度版ハンドブック version 3 現場で働く指導医のための 医学教育学プログラム―基礎編 文部科学省　課題解決型高度医療人材養成プログラム ―京大で臨床研究力／医学教育力を強化する！― 京都大学大学院医学研究科　医学教育推進センター 目　次 ●　ご挨拶　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●　プログラムの概要と目的　　　　　　　　　　　 ●　本プログラムの思想?哲学　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●　本プログラムが考える 「よい医学教育者」に求められる能力　　　　　　　 ●　医学教育学カリキュラム ユニット一覧　　 ●　本プログラムにおける基本的な学習?教育法　 ●　ラーニングマネージメントシステム 『PandA』について　　　　　　　　　 ●　2015年度受講生の声と授業風景　　　　　　　　　　　　 ●　参加体験型授業?Web討論型授業 年間カレンダー　　　　 ●　参加体験型授業?Web討論型授業 予定表 ●　募集要項　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●　スタッフ紹介　　　　　　　　　　　　　　　　　 ●　アクセス／便利マップ　　　　　　　　　　　　　　 02 03 04 05 06 08 08 09 10 12 17 18 21 1 ご 挨 拶 京都大学医学教育推進センター センター長?教授 プログラム監修 　　小西 靖彦 「現場で働く指導医のための医学教育学プログラム?基礎編（FCME）」にようこそ。 　医師は一生勉強することが大切だ、と言われます。複雑化、高度化する医療の なかで、医師は日々学習を続けています。この学習者を支援するのが教育者であり、 医療では指導医が多くの役割を担っています。 　私たちの医療は世界をリードしています。日本の医療の質をさらに高めていくた めには人材育成が必須であり、そこにはよい教育の場が求められます。しかし、 我が国の医学教育はまだ経験の踏襲から抜け出せていないところがあります。 　医師として必要なコンピテンシーには、医療行為ができるだけでなく、プロフェッ ショナリズムやコミュニケーション能力、社会を基盤とした考えなども必要といわ れます。これらに加えて、私たちは、教育力をもつことと組織でのリーダーシップ ／マネジメント能力をもつことが優れた医師には必須だと考えています。 　FCMEは、医学教育について腰を落ち着けて考え、学ぶ機会を作ります。この プログラムを修了すると、京都大学から履修証明書が発行されます。FCMEが、 わが国で医学教育を学び深めることの鏑矢となり、さらに発展していくことを祈っ ています。 2 プログラムの概要と目的 本邦には現在約30万人の医師がおり、そのほとんどがキャリアのどこかで教育に 関わります。例えば大学で働く教員の先生は学生や院生の教育に、臨床研修病院 で働く先生は初期研修医指導に、開業して診療所で働く先生は患者教育に。ただ 医学部では「教える」ということについて学ぶ機会はほとんどありません。そうす ると、どうしても「自分が教わった方法」で教えることになりがちなのですが、多く の先生がその「自分が教わった方法」でよいのだろうかと感じたまま、教育に関わっ ているという現状があります。 その意味で多様な教育方法を知って教育活動の幅を広げることは、非常に意義 があります。また「なぜ教えるのか？」や「何を教えるべきなのか？」といった問い に対しても、医学教育学は一定の理論的枠組み（レンズ）を与えてくれます。本プ ログラムを受講される皆さんには、そのレンズを使って自分自身の教育を省察（振 り返りともいいます）し、教育活動の幅を広げてもらいたいと思っています。 医学教育学の考え方の一つに「教え方に唯一解はない」というものがあります。 別な言葉を使えば「Bestな教育は存在しない」という言い方もできる。学生や研 修医の数、彼らのやる気、教える内容、自分の調子、部屋の温度など、様々なも のに教育活動は影響を受けます。教育に関わる者はそのような状況を全て加味し ながら、どのようにしたら自分が伝えたいと思っている内容を学んでもらえるのか、 と問い続けるしかありません。その際に、本プログラムが提供するレンズが皆さん の視野を広げるという形で一助となることを心から願っています。 京都大学医学教育推進センター 准教授 プログラム責任者 　　錦織　宏 3 本プログラムの思想?哲学 1. 医療?教育の実践を通して他者貢献「感」を得る 2. 多様性を重視する（社会構成主義＞実証主義） 3. 実証主義文化圏である医学と社会構成主義文化圏である教育学を 適切に行き来する（プラグマティズム。適度に「よい～」について問う） 4. 自己省察?自己評価を重視す