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1 熱力学関係式の簡単な誘導法 ～熱力学の四角形を用いて～ （化学と教育、47(3)、p196～p199を修正したもの） 名古屋工業大学 しくみ領域 多賀圭次郎 化学熱力学ははなはだ難解な学問であるが、その原因の一つに多くの変数が用いら れていることにある。また、その変数が参考書によって異なる文字が割り振られてい ること、熱力学第一法則の定義式が、エネルギー移動の視点を系の内側におくか（現 在の国際的協定）、系の外側におくか（機械工学、化学工学、高校の物理）により、 式の形が統一されていないことも難解さの一因となっている。これらの熱力学関係式 を化学系の学生はただちに暗記しようとするが、物理系では最初から誘導するよう、 暗記しないように指導している。ここでは、多くの熱力学関係式を誘導するに際し、 熱力学の四角形を用いれば、暗記することなしに正確に得られる方法を示す。その前 に、復習として、基礎的な熱力学関係式をすべて誘導してみる。参考書は、アトキン ス「物理化学」を使用した。 ☆ 内部エネルギー ：U （またはE） 熱力学第一法則の微小変化d d dU q w= + に、エントロピーの微小変化の定義式 d dS q T = と、力学的仕事の定義式d dw P V= ? を代入すると、d d dU T S P V= ? ????? (A-1） となる。式の形から ( ),U f S V= ?????(B-1) である。全微分をとると、 d d V UU S S ?? ?= ? ??? ? d S U V V ?? ?+? ??? ? ?????(C-1) が得られる。(A-1）と(C-1)の係数は等しい ので、 V U T S ?? ? =? ??? ? ?????(D-1.1)、 S U P V ?? ? = ?? ??? ? ?????(D-1.2) が得られる。得られ 2 た(D-1.1)を S一定としてV で偏微分すると、 V S U V S ? ?? ?? ? ? ?? ?? ?? ?? ? ( ) S S TT V V ? ?? ? ? ?= =? ? ? ?? ?? ? ? ? と なる。また、(D-1.2)を、V 一定として Sで偏微分すると ( ) S VV U P S V S ? ?? ? ?? ? ? ?= ?? ? ? ?? ?? ? ?? ? ? ?? ? V P S ?? ?= ?? ??? ? となる。内部エネルギーは状態量であるので完全微分の性質をもち、微分 の順序に依存しない。したがって、 2 2U U V S S V ? ? = ? ? ? ? より、 S V T P V S ? ?? ? ? ?= ?? ? ? ?? ?? ? ? ? ?????(E-1) となる。これをMaxwellの関係式という。 ☆エンタルピー：H（いわゆる我々の身の回りにある“熱”のことである） 熱力学第一法則 U q w? = + において、圧力一定での体積変化分の仕事量を w P V= ? ? とおくと、 U q w? = + Pq P V= ? ? となるので、 Pq U P V= ? + ? ( )U PV= ? + と なる。ここで、圧力一定のときの系の全エネルギーをエンタルピーHとよび、 H U PV= + ?????(F-1) とおくと、 Pq H= ? となり、通常の熱変化がエンタルピー変 化 H? で表される。 さて、Hの微小変化は、 ( )d dH U PV= + ( )d dU PV= + d d d dT S P V P V V P= ? + + 、し たがって、d d dH T S V P= + ?????(A-2） となる。式の形から ( ),H f S P= ?????(B-2) である。全微分をとると、d d P HH S S ?? ?= ? ??? ? d S H P P ?? ?+ ? ??? ? ?????(C-2) となる。(A-2）と (C-2)の係数は等しいので、 P H T S ?? ? =? ??? ? ?????(D-2.1)、 S H V P ?? ? =? ??? ? ?????(D-2.2) が 得られる。一方、エンタルピーHも状態量であるので完全微分であり、 ? ? ? = ? ? ? 2 2H P S H S P より、 P S H P S ? ?? ?? ? ? ?? ?? ?? ?? ? ( ) S T P ?? ?= ? ??? ? S T P ?? ?= ? ??? ? 、 ( ) S PP H V S P S ? ?? ? ?? ? ? ?=? ? ? ?? ?? ? ?? ? ? ?? ? P