科学技術の倫理.ppt

ある法律を（施行することを）評価する場合には、ある行為に倫理的に問題があるかないか考える場合とは違った考慮が必要である ある行為を評価する場合には、その行為をとったらどんなことが起こるかを考えるべき ある法律を（施行することを）評価する場合には、その法律を執行しようとするとどうなるかを考えるべき これは、皆がその法律が命じている行為をしたらどんなことが起こるかを考えるというのとは違うことに注意 というのも、①普通の場合、法律は必ずしも（皆に）守られるわけではなく、②法律を執行する場合にはなんらかのコストがかかるので、そのコストを考慮にいれる必要があるから 法律は必ずしも（皆に）従われない 例：　改正交通法における後部座席のシートベルト着用義務 ほとんどの刑法には罰則規定があることからわかるように、法律はいくばくかの違反者が出ることを想定して作られるのが普通である 法律の執行にはコストがかかる たとえば、ある行為（たとえば、リタリンなどのスマートドラッグの使用）を法律で禁止して、違反者に刑罰を科すことにするとしよう すると、①人々の行動の自由の制限、②法律作成と周知にかかるコスト、③違反者を探し出し、検挙し、裁判にかけ、刑罰を適用することにかかるコスト、④えん罪のリスク、⑤政府による法律の濫用のリスクなどが生じる。 その法律（案）を施行することは、執行に関わるコストを考慮に入れたとしても、全体としてよい結果をもたらすであろうか？ その法律（案）は、他の法律案よりよい結果をもたらすだろうか？ その法律（案）を施行することは、法的でない手段をとることよりましな帰結をもたらすだろうか たとえば、個人の良心に任せるとか、世論や市場による抑制に任せるとか、関連団体の自主規制を促すといった法的でない手段の方が、よりよい結果をもたらすかもしれない クレジット詐称を法律で禁止すべきだろうか？ FFPを法律で禁止すべきだろうか？ 著者名不当表示を法律で禁止すべきだろうか？ 二重投稿を法律で禁止すべきだろうか？ などなど 考えてみよう * * * * * * * * 科学?技術の倫理３．（科学）研究者の社会的責任、リスク評価、法と倫理 201１　鈴木　真 内容 研究者の社会的責任 リスク評価 法と倫理 研究者が社会に対して持つ義務 研究者は研究している主題について他の人々にはない専門知識や方法論を持つ したがって、特別な義務が研究者にはある、論じられることがある 研究者が社会に対して持つ義務：　候補例 １．自分の専門に関して「間違った見解」がはびこっていたら、それをただす（もしくは、より積極的に「ただしい見解」を社会に広める） たとえば、疑似科学的言説がはびこっていたらそれに注意を促す。 ２．研究している主題が関連する社会的問題や公的プロジェクトが持ち上がった際には、自らの専門知識や方法論によって貢献する たとえば、気候変動を研究している科学者は地球温暖化が起こっているか、起こっているとしたらどうしてかについての議論に関与すべき 研究者が社会に対して持つ義務：　候補例つづき ３．説明責任：　自分の専門分野で社会にとって重大な帰結をもたらす恐れがある発見がなされた際は、社会に通告しその重大さを平易に説明する たとえば、人々の記憶に基づく証言が誤りを含むことが多く、また脳科学の進歩によって誤った記憶をただしい記憶から区別することが可能になるならば、脳科学者は司法?警察?検察を含む社会にそれを説明すべき （マイケル?S?ガザニガ、梶山あゆみ訳、『脳の中の倫理』、紀伊国屋書店、2005、第八章を参照） 4. 公衆に危険が及ぶ方向で利用される研究に携わることを拒否する 個々の科学者の良心の問題か? （４）科学者が自分の研究が公衆にとって危険な応用をされると予測できる（しかもそのリスクが研究から生じる利益より大きい）場合には研究を避けるべきだ、という見解には、以下のような批判がありうる ある研究者が危険な研究をやらなくても、代わりのもっと熱心な研究者が同じ研究を推進して危険が更に高まってしまうかもしれない。そこで、個人の研究者が良心的に危険な研究に携わることを拒否するだけでは悪い帰結は回避されない。 たとえば、原水爆や生物兵器に関する研究をある研究者がやめても、代わりの研究者がやっただろう。 この批判をふまえると、公衆に危険が及ぶかもしれない研究の場合には、科学者が一律にその研究から手を引くようにさせる仕組みづくりがいるように思われる たとえば、危険が予測される研究をやったら科学研究者のコミュニティから追放して研究が続けられなくするとか、科学研究者の雇用主が危険な研究をさせることを法律で禁止するとか その際には、何が公衆に対する危険にあたるかをはっきり