広汎性発達障害とは？.doc

PAGE 28 広汎性発達障害をもっと知ろう 新潟県立精神医療センター 児童青年期部門 のぎく出版 もくじ はじめに 3 1.　広汎性発達障害とは 4 2.　構造化について 8 3.　PDDのこどものコミュニケーションについて 10 4.　問題行動への対応＜混乱をなくするために構造化を＞ 16 5.　各年齢でやるべきこと 20 6.　利用できる公的補助 24 7.　参考書籍 25 8.　参考になるインターネット上のページ 26 著者紹介 27 はじめに 広汎性発達障害にこどもたちへの対応にあたって，なにが必要なのでしょうか？ わたしたちは，親御さんや学校の先生方のこの疑問に日々向きあうなか，お伝えすることがとても多いことに気づきました．日々の外来のなかで，必要な知識をお伝えすることが困難であるので，2001年度から家族教室を開催しました．しかし，それでも，親御さんたちのニーズには応えきれないことを実感しております．そこで，みなさまの予習復習が少しでも便利になるようにという願いで，パンフレットを編集してみました． 広汎性発達障害のこどもたちの発達はとてもゆっくりです．こどもたちだけに訓練や学習を求めていたのでは，決して上手くいきません．周囲が対応を勉強して，彼らを取り巻く環境を整えることで，初めてこどもも周囲も幸せになれるのだと思います． 2002/04/17　著者 1.　広汎性発達障害とは？ 広汎性発達障害とは，自閉症と，アスペルガー障害など自閉症に近い特徴をもつ発達障害の総称です．生まれつきの障害で，育て方や環境の問題ではありません．重症度はさまざまですが，軽症の人も含めると，人口の0.5～0.9%もいると考えられています． 1. 広汎性発達障害(PDD)の診断 3つの特徴で診断されます． 対人関係の障害(場面に応じた適切な行動がとれない) ことばなどのコミュニケーションの障害 こだわり，あるいは想像力の障害 3つの障害の程度によって，自閉症，非定型自閉症，アスペルガー障害などと診断されます． アスペルガー障害とは，ことばの遅れがなく，対人関係以外の困難が目立たない人達です． 2. 自閉症児の特徴 診断のところで述べた以外にも，PDDのこどもたちはさまざまな特徴をもつので，配慮が必要です．以下のものは，PDDのこどもに比較的多くみられる特徴です． まねをするのが苦手なので，教えるのに工夫が必要です． 特定の音に対して敏感すぎたり，逆に鈍感であったりします． きらきら光るものを凝視したり，物を斜めにしてみたりします． 何でも味見したり，匂いを嗅いだりします． 痛みに鈍感で，転んでも泣かないことがあります． 不安になるとなかなか収まりません． 不安な体験や，いやな体験を，ずっと後になって思い出して落着かなくなります． 人の表情から感情を理解するのが苦手です． 人がなにを考えているのか推し測れません． 身体を軸にしてくるくる回るなどの常同行動がみられることがあります． 特に年少時は多動であることが多いです． 得意なことと，不得意なこととのギャップが著しいことが多いです． 一度に多くの情報を与えられると混乱します． 3. 自閉症児の教育はなぜ困難か 得意?不得意のアンバランスが著しいので，能力を正しく評価し，その子にあった教育が必要です． ただ禁止することは，かえって問題を増やすもととなります．替わりになにをやったらよいのか分からないからです． (3)物事を教えるときに構造化という工夫が必要です．このことについては次に説明します． 4. 構造化ってなんだろう “夜になったらパジャマを着る”ということを考えてみましょう．これを正しく行うためには， (1)どのタイミングでパジャマを着るか判断することが必要です．自閉症の子は周りの状況から判断することが苦手です．また，ことばによる指示も理解できないことがあります． →タイミング，状況を伝える工夫 (2)パジャマを正しい順番で身につけなければなりません．順序だった行動が苦手です． →段階的に複雑な手順を習慣づける 以上のことを自閉症児に教えるためには，ことばだけに頼らないで，目で見て理解するのが得意であることを活用する，習慣づけを利用するなどに配慮が必要です．構造化には，①物理的構造化(決まったことを決まった場所でする)，②ルーチン化(課題や指示の手順を一定にする)，③一日のスケジュールを一定にして見て分かるように示す，④ワークシステムの確立，⑤視覚的構造化(目で見て分かるように示す)などの方法があります． 5. 治療教育の原則 親，学校が共同で…学習や習慣づけには繰り返しが必要です