曹操と青州黄巾の関係について.PDF

［研究ノート］ 曹操と青州黄巾の関係について 露：無啓介 1．はじめに 　筆者は、黄巾軍と曹操、この両者の政治的目的の共通点について考証を進め、特に曹操 と豊州黄巾の関係について探ってゆき、離州黄巾軍を青州兵として自己の軍団に組み込ん だ曹操のその後の政策、行動が、黄巾農民運動とどのような関わりを持っていたのかを考 えてゆきたいと思っている。 　筆者がこの時代に興味を持つようになったきっかけは、中学時代に読んだ小説『三国志』 であった。Dその後、コンピューターゲームの『三國志』シリーズ2）も筆者に興味を持た せたものの一つとしてあげられる。そこには、紀元二世紀後半から三世紀にかけて、中国 全土を駆け抜けた数々の英雄、豪傑達のドラマがある。しかし、これらはフィクションで あり、実際の歴史とは多少異なっており、その実態はどうであったのかを明らかにしたい。 　三国時代を引き起こすことになった直接のきっかけは、後漢末に起きた黄巾の乱である。 「蒼天已に死す、毛書まさに立つべし。歳は甲子にあり、天下大吉。」というスローガン を掲げたこの乱は、事実上後漢王朝を崩壊せしめるに至った。黄巾の乱勃発の原因につい に主要な生産関係、支配隷属の関係を認めて、その矛盾の中に農民叛乱の要因を求められ ている。それに対して川勝義雄氏は、「漢末のレジスタンス運動」（『鮮史研究』25－1、1967年） で、豪族の強大化によって農民層の貧窮化・階層分化が進行し、このため小農民の闘争が 国の基本構造は皇帝による小農民の個別人身的支配にあったとされながらも、関東に於け る流民の発生は豪族の私的経営の進行によるもので、それが反乱の原因であったとされて いる。 　黄巾の乱勃発によって、後漢王朝の権威は有名無実化してしまい、各地に天下を伺おう とする群雄達が割拠し、互いに争いを繰り広げてゆく。このような群雄割拠の時代の中か ら、めきめきと頭角を現してきた人物が、後に魏の国の基礎を作り上げた曹操である。小 説の中での曹操は、常に悪役の典型として描かれているが、実際の曹操は、いかなる人物 であったのであろうか。曹操の生涯については、竹田晃氏『曹操一その行動と文学一』 （譜社、1973年）に客観的に詳しく書かれているが、筆者は、客観的にみて優れた政治手腕と 指導力を持っていた人物であったと考える。 　曹操は群雄割拠の時代の中から、いかにして中国北部のほとんどを自分の勢力にするほ どの力を持っていったのであろうか。この点について筆者は二つの事が契機となったと考 一87一 える。一つ目は、192年置初平3）に、青州黄巾軍を打ち破り、その降卒三十万人を青 州兵として自己の軍団に組み込んだことである。二つ目は196年（建安元）、皇帝を自 分の都に迎え、皇帝の権威を利用し、天下に号令が下せるという大義名分を得たことであ る。青州黄巾を手にいれたことに付いては、「魏武の強、これより始まる」3）とも言われ ているように、曹操の力が一気に高まったと考えられる。 　ここで筆者が問題としたいのが曹操と野州黄巾との関係である。この問題については研 究課題として後述するのででここでは詳細は割愛させていただくが、筆者は曹操と甲州黄 巾との間になんらかの関係があったのではないかと思うのである。この両者の関係を詳し く論じられている論文は今までほとんどない。しかし、黄巾、曹操それぞれについての研 究は今まで数多くなされてきているので、これらの先行研究を踏まえながら、手操と青苧 黄巾の関係について探ってゆきたい。そして、青州兵を手に入れた後の曹操の政策、行動 が黄巾農民運動とどのような関係があったのか、また皆野の果たした歴史的役割について も論じてゆきたいと思っている。 　　　　　　　　　　　　　　　　皿．研究課題 　これまでの先行研究を踏まえながら、筆者が抱いている研究課題について述べてゆきた い。 ①曹操が青州黄巾を降伏させたことについて 　西暦192年（初平3）、等等は予州黄巾軍を降伏させたと『三国志』にある。4）しか し、このとき青州黄巾は、曹操に降伏を勧告する手紙を送っている。この手紙の内容は、 「あなたは昔、済南にあったとき、神壇を壊したことがあった。それは我々の奉ずる中黄 太