紹介根室で観察されたハ一現象.PDF

326 会員の広場 紹介：根室で観察されたハ・一現象 浅　野　正　二＊ 　過日，根室市の小学校長の松永氏から，ハ・一（量） 現象1）の写真と撮影記録が届けられた．教材として利用 と考えられる． したいとのことで，解説の依頼を受けた．写真には，幾 　更にpuzzlingで興味深いのは，最後の図4の現象で つかのハ・一が完全な形で明瞭に見られる．根室地方に ある．この時点では，太陽の右側の幻日のさらに右外 おいても，このように整ったハローが見られたのは極め に，太陽一幻日とほぽ同じ距離はなれて輝点が現れ，それ て稀とのことで，当時この写真は地方新聞に掲載された と太陽を結んで幻日を中心とする光環が見えたとある． そうである．今般，撮影者の松永氏の御好意により， 松永氏によると，太陽の左側にも同様の光環が肉眼では 「天気」にも紹介する許しをいただいた．日頃空を見上 かすかに認められたが，鮮明でなかったので記録（図4） げることの少なくなりつつある私達r気象」関係者に では省略したとのことである．また，これらの光環は赤 も，自然の美と神秘とを再認識させるものと思う． 味を帯びて見えたと言う．大変惜しまれることに，この 　さて，撮影記録にあるように，氷晶雲（薄い巻層雲 段階での写真撮影は行われなかった．寡聞にして筆者 か？）が空に広がり始めると，まず内量2）が現れ（図1）， は，この様な形の第2の光環の例を他に知らなかった． 次いで，太陽の左右両側に幻日3）が出現した（図2）．更 に，内量の上端と下端部分が明るく輝き，上端接弧及び 下端接弧4）が現れた（図3）．撮影記録の図には示されて が載っていることを教えていただき，このようなハ・一 いないが，写真（おそらく図3の時点での撮影と思われ が事実起こり得ることを確信した． る）には，太陽と左右の幻日を貫く幻日環5）が鮮明に写 　さて，図4のr第2光環」及び最右端の輝点の成因で っている．ただし，写真では下端接弧は明瞭ではない． あるが，r第2光環」の視半径が内量のそれとほぽ等し （蛇足ながら付け加えると，この写真は太陽を直接写し いこと，また色彩を帯びていたことを考慮すると，太陽 込んだので，惜しいことにハローのコントラストが落ち の右側の幻日を光源として生じた二次的なr内量」及 た．ハ・一を撮影する場合，太陽を何か障害物で隠すと びr幻日」ではないかと推察される．つまり氷晶によ よい）この時の太陽高度は，約30。であった．これらの って散乱8）された光が他の氷晶によって再び散乱されて ハ・一現象は，ランダムまたは水平な空間姿勢6）をとる 現われる，二次散乱効果の現象と考えられる．最近，気 六角柱形や六角板形の氷晶による光の屈折または反射に 象光学の分野でもコンピュータrを用いた光学現象のシ よって生じると説明されている（例えば，浅野，1979； Greenler，1980）．この場合，内量や幻日など屈折による ものは光の波長による氷の屈折率の違いにより色づいて ョンでは，水平な空間姿勢にある厚い六角板状氷晶によ 現れる．他方，幻日環など外部反射によるものは光源と． る二次散乱の結果，太陽から44。の位置に付加的な幻日 同色に明るく輝いて見える．また，写真では太陽の周囲 が現われることが示された．外量9）に付随した46。幻日 が菱形に輝いている．この菱形の輝度分布は，幻日環と として従来見なされていた輝点は，実は44。幻日であろ 太陽柱7）との複合効果とも見えるが，この時の太陽高度 うと彼等は述べている．この44。幻日が図4の最右端の では有効な太陽柱は期待できない．むしろ，菱形の周辺 輝点にあたる．ただし彼等のシミュレ」ションには， 光分布は，水平な空間姿勢を保つ氷晶による回折光の十