腎臓教室熊本地震を振り返って地震災害に遭遇したら.PDF

室 教 臓 腎 熊本地震を振り返って 地震・災害に遭遇したら・・・ 　まだ記憶に新しい熊本地震、激しい揺れで多くの病院が被災しま した。停電や断水、ライフラインなどが切断し、透析治療が困難に なる病院も続出しました。地震に遭遇したらどうしたよいのか、災 害地拠点病院として多くの患者さんを受け入れた済生会熊本病院の 副島一晃先生と井上浩伸先生に、熊本地震を振り返り注意点をおし えていただきました。 済生会熊本病院　腎臓科部長　副島 一晃 先生　 腎臓科医長　井上 浩伸 先生 熊本地震を振り返って 腎臓科部長　副島 一晃 先生 　 日本は地震国でこれまで幾度となく大震災を経験してきました。そのような経験から各透析施設で災害 対策マニュアルの作成や災害訓練などいろいろな災害対策が行われていることと思います。 　2016 年 4 月 14 日 21 時 26 分、熊本地方を震源とする震度７の大地震が発生したことはご存知かと思 います。この日は木曜日で多くの病院・クリニックとも透析治療は施行していない時間帯で前震が起こり ました。この前震で被災し透析不能となった施設はほとんどなく、透析室も壁のひび割れが主な被害で、 4 月 15 日の透析はほぼ通常通り行うことができました。 　そして、まだ前震の後片付けに忙しくしているなか、4 月 16 日深夜 1 時 25 分にマグニチュード 7.3 の本震が発生し、熊本市を中心に多くの透析施設が被災し、断水で水の供給が途絶え透析治療が不能となっ た施設が多数にのぼりました。本震では当院も被災し、貯水槽にひびが入り給水能力が半分になる被害を 受けましたが、透析室への水供給は可能で透析室はほぼフル稼働可能な状況でした。近隣施設からの情報 が入るにつれ、当院が透析不能となった施設から多くの数の患者さんを受け入れ透析医療を提供しなけれ ばいけないことは明らかでした。 　透析には大量の水が必要なので、今回のような震災に直面し水不足が懸念される状況では通常の透析治 療は受けられません。限られた水・医療資源で、できる限り多くの患者さんに透析医療を提供することが 最優先となります。透析時間の短縮と透析液流量の制限が必要で、4 月 16 日の透析室がまさにそのよう な状況でした。透析時間を 2 時間、透析液流量を 60％として節水に努め、可能な限り多くの患者さんを 受け入れられる体制としました。 　停電の復旧、物資の支援、透析施設への給水など復旧がすすみ、受け入れ透析患者数も徐々に減少し透 析室も 10 日ほどでほぼ通常の透析スケジュールにもどり、振り返れば 223 名の患者さんを受け入れ透析 を提供していました。被災しているにもかかわらず頑張ってくれたスタッフの努力、患者さんの協力、お 互いを思いやる気持ちの大切さを実感した日々でした。 　当院は災害拠点病院でもあり、今回の地震に際し全国の医療施設から物心両面の多くの支援をいただき ました。この紙面をお借りし御礼申し上