術後急性期患者の生活リズムの自然回復を促進させる .PDF

術後急性期患者の生活リズムの自然回復を促進させるモーニングケアの開発 -歩行介助を要する整形外科患者に対する効果- 聖路加看護大学大学院 看護学研究科 博士後期課程 大橋久美子 Ⅰ．序論 1．研究の背景 高齢社会における日本において、手術を受ける患者も高齢化している。一般に術後の睡眠覚醒リ ズムは麻酔や手術侵襲により乱れるが、高齢者においては認知機能低下や体内時計である脳の視交 叉上核(SNC)の変性が重なり回復が遅れる。また、術後急性期患者の生活リズムは、睡眠覚醒リズム の乱れや術後の身体症状や慣れない入院生活からのストレスによる睡眠障害や活動意欲の低下など から影響を受けている。さらに生活リズムの変調は術後せん妄と早期離床やリハビリ遅延につなが り回復を妨げるため、予防的に術当日夜からの昼夜のリズムを考えた援助(山田,2008)が提案されて いる。 概日リズムはリズム同調因子である早朝の光により24時間周期に調節され、位相調節として活動 期を昼間にセットしている(本間,2005)。朝は、生活リズムにおける夜の休息期から日中の活動期へ の移行時期であり、患者が日中の活動にむけ主体的に準備をする時間である。しかし、歩行介助を 要する患者の場合、朝の環境づくりや身支度などの生活習慣行動が阻害され、さらに今朝の身体状 態や今日の予定への気掛かりや睡眠で回復しきれない苦痛などからも、患者の主体的な活動準備が 妨げられる(大橋,2008b)。 そのため、術後の生活リズムが変調しており朝から活動性が低下しやすい患者に対して行うモー ニングケアは、高齢化する手術患者の回復促進という看護の観点から重要な日常生活行動援助にな りうる。本研究は、現在の洗面介助を主とするモーニングケアを生活リズムの視点から見直し、歩 行介助を要する術後急性期患者に対して看護師が行う生活リズムを活性化させるモーニングケアの 開発に取り組む。 2．研究目的 本研究目的は、歩行介助を要する術後急性期(手術翌日から3日間)の整形外科患者に対する生活 リズムを活性化させるモーニングケア(以下、快適起床ケア)の開発である。まず快適起床ケアと評 価指標を作成し、次に通常のモーニングケアを行う群と快適起床ケアを行う群を生活リズムの活性 化の点から比較することで快適起床ケアの有効性を検証し、さらに患者と看護師の評価から実用性 を検討する。この過程を通してケア内容と概念枠組みの改善や洗練を行うことで、快適起床ケアを 開発する。 1 3．概念枠組み 快適起床ケアの理論的基盤は、Westfall(1992)の時間治療学的・看護モデルとKlages(1944)のリ ズムの活性化に関する現象学的･心理学的･生哲学的視点である。Westfallのモデルからは生体リズ ムのリセット機構に関与する同調因子の活用と看護介入のタイミングについて参照した。介入時期 を早朝としてケア内容に環境整備を含めることによって同調因子が取り入れられ、自然との外的同 調と生体リズム同士の内的同調が維持され、生活リズムの基盤ができる。また、Klages(1944)の視 点からはリズムを強化するためのアクセントとなる拍子とリズムを活性化させる精神の役割につい て参照した。拍子としての3日間の定期的なケアが、生活リズムに振幅(メリハリ)をつくる。また、 抑制感情の解放のために、患者が一日の活動開始に必要としている早朝の援助ニーズに対応したケ ア内容を加えることで、朝の活動性が高まり生活リズムが活性化する。 本研究の生活リズムの活性化とは、夜の休息期から日中の活動期への移行が円滑に進むことであ り、抑制感情が解放され朝の活動性が向上することと定義した。 4．研究仮説 A．快適起床ケア群は通常ケア群よりも抑制感情が解放される;a.快適感が高い、b.今日への活力 が高い、c.術前から術後3日目の気分が改善する。 B．快適起床ケア群は通常ケア群よりも朝の活動