リスク低减の方策.doc

第7章　電気事故とリスクマネジメント 7―1　高圧ケーブル?電気機器の事故 1　CVケーブルと水トリー現象 　日本における高圧電力ケーブルは各種の欠点を補正して物性改良の結果、殆ど架橋ポリエチレンを主絶縁体とするCVケーブル(cross-linked polyethylene cable)が使用されています。しかしながら、内部に絶縁性能の低下する現象が発見され、この原因として、絶縁体内の微量水分または浸水状態の長期使用により、内?外部半導電層を通して絶縁体内に発生し、進展すると見られる水トリー現象が発見されました。必ずしも完全にその現象が解明されたわけではありませんが、その一端を紹介します。 (1)　水トリー劣化と事故率 　CVケーブルの劣化要因は表7－1のように分類され多種多様ですが、主たる劣化要因は電気的なものとして考えられています。電力会社資料、他の報告によれば、6.6KV地中は配電ケーブルの３０％以上を水トリーが占めているといわれています。 分　　　別 劣　化　要　因 劣　化　形　態 特　　　　徴 電気的劣化 運転電圧過電圧 サージ電圧 直流電圧 部分放電劣化 電気トリー劣化 水トリー劣化 絶縁体に発生し絶縁破壊に直接移行する 設計製造技術で改良する 熱的劣化 異常温度上昇 熱伸縮など 熱劣化 機械的損傷、変形 許容温度以上で絶縁体を熱的に劣化させる 伸びだし、屈曲の作用でケーブルに損傷を与える 金属被覆の場合は金属疲労を起こす 化学的劣化 油、化学薬品など シースの膨潤 腐食 化学的とリー劣化 敷設場所を事前に検討する 直接絶縁体に害のあるケースは少ない 機械的劣化 外傷、衝撃?側圧異常など ?　機械的損傷、変形など ?ケーブル敷設などによる外傷 生物学的劣化 動植物による食害、孔食など 蟻害、鼠害など ?　敷設方法などを検討して害を防止する 表7－1　CVケーブルの劣化要因と劣化形態 (2)　水トリー劣化 　水トリー劣化は、CVケーブル等においてケーブル絶縁体周辺に水が存在し、局部的な電解集中が原因で、絶縁体内に樹脂状(treeトリー状)に進展する絶縁劣化現象を言います。 ?水トリーとは、ポリエチレンのような絶縁材料が長期間に亘って水が存在し、共存する状態で、電界に曝されたときに発生するもので、その形態は、水で充填される余地のある種種の樹脂状の微細な通路、或いは空隙です。実際に水分が充填されているときには白色に見えるが、乾燥により見えなくなります。?(電気学会技術報告による)その詳細については不明です。 内導トリー 　内部半導電層(導体上半導電層)を起点として発生し、外部半導電層へ進展します。内部半導電層がテープ式の場合に布テープの端部やケバ等の不整部を起点として発生します。 外導トリー 　外部半導電層(絶縁体上導電層)を起点として発生し、内部半導電層へ進展します。 ボウタイ状トリー 　絶縁体中のボイド及び異物を起点として発生し、内部及び外部半導電層へ進展する 蝶ネクタイ状のトリーです。 　水トリーの発生原因は、局部高電界とそこに供給される水であると推定されています。局部高電界は、微小ボイド、異物、突起等に電界が加わることにより発生します。この水　トリーが絶縁体内を進展し、絶縁体を貫通(橋絡)したときに絶縁耐力が低下し、絶縁破壊へと至ります。そのフローを図7－1に示します。 図7-1　水トリーの進展フロー 　図7-1に示される劣化過程を考えるときに、保守段階においてこれを発見処理することは難しい課題が多すぎます。表7－3に示すように絶縁劣化診断に必要な絶縁抵抗値が示されていますが，その値は、周囲の湿度環境に支配されるのはもとより、高圧ケーブルを接続回路から切り離して測定する必要かあります。停電時間が限られ、定期的に行うことは困難です。 2　絶縁劣化の診断 高圧ケーブルの劣化診断といえば水トリー劣化といわれますが、この診断を行なうには診断方法も各種のものが上げられてしますが、自家用電気工作物では中々良い方法がみつかりません。参考に劣化要因として、ケーブルの特性要因図を紹介しますと、図7―2のとおりです。 運転電圧　　　　　　　　　　　過負荷 食害 ボイド放電?水トリー　　　　　　過電流?直射日光　　　　　　　　　蟻害?鼠 　　　　異常電圧　　　　　　　　　　　施工不良　　　　　　　　　　　　施工不良 　　　落雷?絶縁低下　　　　　　　　　　半田鏝の熱　　　　　　　　　　　ナイフの傷 　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　劣化 　　　　　　　　　　　　　ケーブル布設　　　　　　　過度屈曲?張力 　　　　　　　　外傷?水没　　　　　　　　工事の外傷 水、薬品