机能班 - 东京大学大気海洋研究所.DOC

生命史班脊椎動物の系統進化東京大学海洋研究所　西田　睦海洋生態系において高次消費者の位置を占めている生物の多くは脊椎動物であり，その中でも魚類が種数，生物量ともに大部分を占めている。そのため彼らは海洋生態系のあり方をトップダウン式に決める重要な存在となっており，その系統的構造と進化史を明らかにすることは，海洋生命系を理解する上で不可欠である。また魚類は系統的には，陸上脊椎動物（四足動物）の全てをその内部に含むものであり，脊椎動物全体の進化を理解する上でも，その系統進化の究明は重要な課題である。そこで本研究グループでは，次のような目的を設定して研究を進めている。第１に，DNA分析を通じて，魚類全体の系統構造の大枠を明らかにすることである。第２に，DNAデータを時間較正し，それを用いて，得られた分子系統樹を基に彼らの進化史をできるだけ正確な時間軸に沿って再構成することである。第３に，いくつかの重要で興味深い魚類グループを取り上げ，それらに関して詳細に分子集団遺伝学的，歴史生物地理学的分析を行い，現在の魚類相の成立過程や海における種分化の過程に関して，理解を深めることも目指している 図１．本プロジェクトで解明を目指す主要な問題点の所在を示す模式図 １．魚類全体の分子系統解析 生命の系統と進化の歴史は，代々伝えられ続けているゲノムDNA上に刻印されている。したがってDNA分析を通じて進化史が読み解かれることが期待される。しかしながら，数億年を越える時間スケールを有する脊椎動物の歴史の全体像は，少々のDNA塩基配列分析では情報量が不足する。そこで，本研究ではまず，我々が自ら確立したロング PCRと魚類汎用プライマーを用いる効率的分析手法（Miya and Nishida, 1999）を活用し，ミトコンドリア（mt）ゲノム（約1万７千塩基対）の全塩基配列分析を，魚類の主要分類群全ての代表種（約250種。この数値は魚類全種の約１％にあたる）について行うこととした。こうして得られる膨大なデータをもとに，海に始まる脊椎動物の系統と進化史の大枠を魚類を軸に明らかにすることを目指している。 本年度は約150種のmtゲノムの分析を行なった。昨年度に既に100余種の分析を完了しているので，2年にして目標とした「250種の分析」を達成したことになる。この大きなDNAデータセットによる分子系統解析によって，初期に分岐した諸系統間の関係を大筋を明らかにすることができた（Inoue et al., 2001）。また，それより新しい時期に派生してきたグループ間の系統関係についても，順次，明らかになってきた（Miya et al., 2001）。 また，これらmtゲノムの全容が明らかになった約270種のうち46種に，標準的な遺伝子配置からの何らかのずれが発見された。この結果は，魚類のmtゲノム構造は，基本的には保存的であるものの，かなりダイナミックに変動するものであるということを示すものである。 なお，より新しくて最も多くの種を擁するスズキ型魚類内部の系統関係については，対象となる種?グループ数があまりにも多いため，我々が得た「250種のデータセット」をもってしても，その全容を解明するにはまだ不充分であることが明らかになってきた。そこで，このスズキ型魚類とその周辺の仲間の系統関係を究明するために，このグループから集中的にさらに200-250種をとりあげて目標に上乗せし，その分析を行うこととした。 ところで，我々のmtゲノムデータに基づく分子系統解析結果の示す系統関係は，これまで想定されていた系統関係と一致するところも多いが，一部には食い違う部分もあった。そうした不一致の多くは，これまでの説の根拠となった形態形質を見なおすことによって解決すると考えられるが，全てがそうであるかどうかは判然としない。したがって，それらについては，さらに豊富な遺伝情報の宝庫である核ゲノムの分析を行い，研究をより深める必要がある。現在，どのような遺伝子やゲノム領域を分析対象にするのが適切かについて，検討を強めている。 ２．分子データの時間較正 　突然変異はほぼランダムに生じるため，ある程度長い時間幅でみると，DNAの変化率は時間当たりほぼ一定であるとみなすことができることである。それが生起した時代がはっきりしている何らかの歴史的出来事などを手がかりにしてこの変化率を時間較正することができれば，DNAデータはいわゆる“分子時計”として，系統分岐の年代を推定するのに使えることになる。我々は既にmtゲノム上のND2およびcytb遺伝子の時間較正を行い（Kumazawa et al., 1999），それが魚類の進化史の解明に重要な貢献をするものであることを，一つの実例で示した（Kumazawa