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藤田紘一郎　著　「ゼロ歳からの免疫力」?子どもの周辺　 大福寺保育園 平成２５年７月号 「ネオテニー理論」 ほかの生物に比べて人間は圧倒的に子どもである期間が長いという特徴があります。性的に未成熟であり子どもを産むことができない期間が異常に長いということです。 しかし、子供であるということは、成長し、学ぶ期間が長いということであり、その結果、人間は知能を飛躍的に発達させることができたといいます。 時間があることによって、好奇心に基づいて探索に出かけたり、ゲームとして新しい技術を身に付けたりというプラスαの学習が発生します。 つまり、「遊びの時間が長いことが脳の発達を促した」。なかなか大人になれない「晩熟の生物」のほうがむしろうまく環境に適応し生き延びることができるという理屈。「ネオテニー理論」と呼ばれています。 長い子ども時代は人間だけに与えられた特権であり、その中で「世界の成り立ち」や「自分の存在意義」などという「大きな問い」を発明した。それがさらなる進歩を促し続けていると考えられます。 その発想から見れば、やはり子ども時代というのは、脳を育むためにあり、脳を育むことで「大きな問い」に出合うことができるようになり、それを探求するために人間は勉強し続けることができるといえるのではないかと思います。 そしてそれは、まわりの世界に興味を持って「いっぱい遊ぶ」ことによって成し遂げられていくのです。　 大福寺保育園 平成２５年５月号 ◆良い天気、悪い天気 　これから梅雨の季節に入ります。例年より早い梅雨入りのようです。 天気にも、晴れの日雨の日いろいろあります。子どもたちは、晴れの日に外で元気に遊ぶことが楽しみのようです。子ども達にとっては晴れた「良い天気」なのでしょうね。 天気予報のアナウンサーが、「明日は、全国的に晴れの良いお天気でしょう」と話しました。すると、雨を待たれている農家の方から「私達には、雨が降るのが良い天気です」と投書があったそうです。 「良い」「悪い」は、どこまでも自分の都合から出た言葉だということ知っておかなければなりません。 世の中には三種類の「いい人」がいます。いてくれた方が「いい人」、どっちでも「いい人」、出来ればいないほうが「いい人」。 それはすべて、自分の都合にとっての「良い」「悪い」なのです。 子どもを、自分の都合の「良い」「悪い」で見ていく時、子どもは、自分を大切にする心、人を愛し他人を思いやる心を捨てていきます。 かけがえのない、たった一人のあなたを、どんなことがあっても護ってあげる、味方でいるよというメッセージを受けて育った子供が、自分の存在を大切にし、世界を肯定して生きていけるのです。 梅雨の雨を受けながら、カエルが楽しそうに鳴いています。アジサイの花が生き生きと色をつけ始めます。 私には「悪い天気」でも、その天気を「良い天気」と喜んで生きているいのちに気付かせて頂く時、私の世界が少し広くなります。そしてそばにいる子どもも、大きな世界を生きることができるのです。 大福寺保育園 平成２５年４月号 ◆キレる 　人はそれぞれ自分の物語を持っています。一人ひとりみんな違って、それぞれの物語の主人公を生きています。同じお父さんお母さんの間に生まれた兄弟でも、兄弟の順番や、出会う先生や友だち、過ごしてきた時間や空間はすべて違います。その物語の主人公である私は、時には喜び、時には苦しみ、色々な経験をしながら一生をかけて自分の物語を作っていきます。 　絵本を読んだり、物語を聞いたり、あるいはままごとをすることは、色々な物語を疑似体験し、その物語の中で生きる人間になりきって、想像力を高め、他の人の気持ちを汲み取る力を育てるのです。 　「キレる」子どもが増えたと言われます。(大人も含め)それは何が切れるかと言うと、自分の今まで大切にしてきた「物語」が切れてしまうことなのです。人間が何かの行為をしようとする時、一瞬のうちに頭の中を走馬灯のようにサーッと走っていく物語がある。すべての人間はその物語に照らし合わせて、自分の行動を決めたりその行動をしなかったりする。自分のしたことで、親が悲しみ友だちもいなくなり、やがて自分も一生負い目を背負って生きる物語になるということがわかると、人間はある程度自分の行動をコントロールできるのです。「キレる」とは、そういった自分の物語の糸が切れてしまうことなのです。 　他人の身になって考えるということは、他人の気持ちになってその人間の物語を自分が作り上げることなのです。そして自分を見失わないということは、自分の物語を見失わないということなのです。