癌治疗における光线力学的治疗の现况.doc

「癌治療における光線力学的治療の現況」 東京医科大学外科学第１ 臼田実男?加藤治文 ＜和文要旨＞ 光線力学的治療（PDT）は、光感受性物質とレーザー照射による、侵襲の少ない癌治療法である。早期肺癌、早期食道癌、胃癌、早期子宮頸癌に対して保険適応されており、良好な成績をおさめている。人口構造の高齢化が加速的に進む今日、高齢者に対する癌治療とPDTは大いに期待される治療法である。従来から、問題とされていた光感受性物質による光線過敏症も第２世代光感受性物質（レザフィリンなど）の出現により克服され、また大きく高価であったレーザー装置もコンパクトで低価格なダイオードレーザーの出現により改善されてきた。今後、進行癌などに対しても適応拡大することにより、新たな癌治療戦略の礎になるものと考えられる。 １．光線力学的治療とは 　　光線力学的治療（Photodynamic therapy: PDT）とは、ポルフィリン関連化合物が有する腫瘍組織、新生血管への特異的な集積性と光の励起により発生する一重項酸素の強い細胞破壊効果を利用した治療法である。正常組織に大きな障害を与えることがなく、低エネルギーで病変部を選択的に治療することができ、レーザー光照射により様々な病変に対して治療可能である。腫瘍親和性光感受性物質が光線に暴露されると光エネルギーを吸収し、励起状態（一重項状態）に転位するが、これが基底状態に遷移する際のエネルギー転換の結果生ずる活性酸素が細胞を変性、壊死に陥らせると考えられている。実際には、光感受性物質は静脈投与後、腫瘍組織に集積し、赤色光線により励起される。 PDTは、機能温存を考慮にいれた、侵襲の少ない治療であるために、今後高齢者癌患者の増加が予測されるために、一層期待されている。現在、我が国では、光感受性物質フォトフリンによるＰＤＴとして、早期肺癌、早期胃癌、早期食道癌、早期子宮頚癌に保険適応されおり、大変良好な成績をあげている。 最近では、光感受性物質の副作用として問題だった光線過敏症は軽度ですむ、第２世代光感受性物質としてレザフィリン（NPe6）が早期肺癌に対して、ビスダイン（Verteporfin）が滲出型加齢性黄班変性症による脈絡膜新生血管に対して新たに厚生労働省より認可を受け、急速に普及している。 ２．肺癌に対するPDT 早期非小細胞肺癌の治療法の第１選択は、外科的切除とされているが、多発重複癌の発生があること、元来呼吸器機能が低下している患者が多いことから、呼吸機能の温存を図る治療法が重要視されてきている。早期中心型肺癌に対して、米国NCIでも治療法としてPDTが推奨され、「EBMの手法による肺癌診療ガイドライン」（日本肺癌学会）においても、「勧められる」治療法である。（1-3） PDTに使用される光感受性物質としては、フォトフリン（専用のレーザー装置としてエキシマ?ダイレーザーあるいはYAG-OPOレーザー）とレザフィリン（PDレーザー）が早期肺癌に対して厚生労働省より認可を受けている。 ＜適応＞ 中心型早期肺癌というクライテリアは、1975年に池田茂人先生により提唱された (4) 。ほとんどの患者が、「咳、痰」、いわゆる「血の混じった痰」などの症状を有している。腫瘍が区域気管支より中枢に位置し、気管支粘膜、粘膜下層に限局し、転移をしていない。実際、PDTを施行する場合には、内視鏡的に早期癌と診断しても、さらに腫瘍径が１cm以下であること、腫瘍の末梢辺縁が内視鏡的に確認できることが大切である。腫瘍径が1 cm以下の病巣に対するPDTのCR率は、95%であるが、1 cm以上の病巣に対しては65%と有意に差異をみとめた。また、腫瘍の末梢辺縁が確認できないような病巣では、CRを得られたとしても、高頻度で再発がみとめられる。Japan PDT Research Groupの施行したX線写真陰性の早期中心型肺癌に対するPDTの多施設共同試験（臨床第II相試験）でも、ほぼ同程度の治療効果が得られ、59例中50例（84.4%）でCRを獲得し、腫瘍の大きさがPDTの治療に影響を及ぼす因子であった。 また、内視鏡的に腫瘍形を肥厚型、結節型、ポリープ型と３つに分類し、その治療成績を比較検討した結果、ポリープ型のCR率は、81.8%とやや不良の傾向にあった。 ＜光感受性物質＞ 現在、我が国において保険収載され早期肺癌に対して使用される光感受性物質は２種類ある。１つは、ポルフィマーナトリウム（フォトフリン、Photofrin; PHE)で、ヘマトポルフィリン誘導体でより腫瘍親和性が高い。フォトフリンの至適投与量は、2 mg/kgで緩徐に静脈投与する。腫瘍組織には、正常組織のおよそ４倍取り込まれ、かつ４８時間以上停滞する特性を有しているため、静