东北大学理学部岩石矿物矿床学教室 - J-STAGE Journals.PDF

岩石鉱物鉱床学会誌 48巻4号, 1962年 北海道虻田硫黄 ・硫化鉄鉱 ・褐鉄鉱鉱床(III) Abuta mine, Hokkaido(III) 阿 部 宏(Hiroshi Abe)* 7.鉱 床 母岩の変質作用 累帯配列型式 硫黄・硫化鉄鉱々床を中心として,か なり規則的かつ薄称的な累帯変質 模様が観察されるが,こ れらを仔細に検討すれば各鉱床においてその型式が若干異つて いる場合もあるので,こ れを比較しつつ記述する。 珪化作用 硫化鉄鉱々床の上 ・下盤には玉髄質石英,蛋白石,ク リストバル石等を伴う 珪質岩帯が形成されており,こ れは殆どが硫化鉄鉱々体と最も近接した位置に発達して いる。鉱体の上 ・下盤においてその分布量の差はなくその厚さは上・下盤ともそれぞれ 30m以 下である。鉱体との関係について述ぺれば鉱体周縁部では珪質岩帯中に粉状硫化 鉄鉱の数cm幅 の細脈が発達しはじめ,次 第に鉱体に近づくにつれて硫化鉄鉱の量を増し て変質帯を交代鉱染し,さ らに鉱体に接近すればその殆どが粉状硫化鉄鉱によつて交代 鉱染しつくされ,そ の内部に主として玉髄質石英よりなるレンズ状～島状集合体がrelic として僅かに認められる程度となり,遂 には完全に粉状硫化鉄鉱帯に移過する。このよ うに変質帯と鉱体との関係を水平的に遠跡すれば一部の黒鉱式鉱床において観察される 硫黄鉱床においても上記同様鉱体に接して帯状に営まれているが,そ の鉱物組合せは 前者が玉髄質石英を主体とするのに対して,硫 黄鉱床では非晶質の蛋白石が遙かに多量 存在する。 この厚さは最高30mか ら5m内 外を示し,上 ・下盤の分布量はほゞ等量で ある。 このように,両種鉱床における珪化作用の累帯配列模様はほゞ同様であるが,その内容 はやや異つている。周知のように変質作用の過程において酸濃度の高い反応剤の洗礼を 蒙つた母岩の諸化学成分中,アルカリ金属,ア ルカリ土金属,アルミ二ュ一ム,鉄等の諸光 素は可溶性硫酸塩として溶脱しつくされ,造 岩鉱物中のSiO2な どは膠状態として遊離, 残留し珪質岩帯を形成したものである。また,火山 の噴気などに伴つてSiO2が 運ぱれる ことは現世の火出地帯でも観察されるが,前 記SiO2の 一部は鉱化反応剤に含まれて移動 することも考えられる。従つてこのような反応剤によつて搬入された若干の珪酸分と, in situの 残留珪酸の両者が組合つて珪化作用が営まれ,こ の場合硫酸濃度のやや高い硫 黄鉱化帯では膠状珪酸の蛋白石化が優勢に営まれ,一 方,こ れよりややその酸濃度の低 い硫化鉄鉱鉱化帯においては玉髄質石英として圏定したものであろう。勿論 湿度の影 響も重要な支配要因であることは末野1)が既に述ぺている通りである。 * 東北大学理学部岩石鉱物鉱床学教室 140阿 部 宏明攣石化作用 硫化鉄鉱鉱沫の鉱体を囲綾する上下盤には前記珪質岩帯の外縁部に明 礬石化作用が営まれている。明礬石は各変質帯に普遍的に分布するが,と くに明礬石を 主体とする帯は比較的限られた範囲であり,厚 さ最大5m程 度で,局 部的に薄い帯状分 布を示すもので下盤側にやや顕著に発達する。 硫黄鉱床では上記硫化鉄鉱鉱床に比較すれば明礬石の分布量は多く,当鉱床における 主要な変質帯を構成している。鉱物的には各変質帯中に存在するが,明礬石のとくに濃集 する帯は厚さ約IOm内 外の帯状分布を示しており,か つ鉱層の上盤側に比較して下盤 に優勢に営まれている。 さらに鉱床の南西方末端部では異常に激しく明礬石化作用が営 まれその彫さ約30mに 達する明礬石 ・蛋白石化帯を形成し,このような部分では鉱化作 用は認められず単なる不毛帯となつている(第12図)。 このような現象は硫化鉄鉱鉱床の 末端周縁部においてモンモリロン石化作用が強烈に営まれている事実と好対称を示すも のである。 明礬石の生成条件例は第5表 に示されるが現在観察される明礬石帯も母岩から溶脱し たKを 含む硫酸