化石层序.PDF

化石層序 寺井一夫＝和歌山県立日高高校教諭 寺井 紀伊半島の最古の化石は，黒瀬川帯の 《イノセラムス》 I.(P.) rhomboids rhomboides, I.(P.) rhom- 石灰岩から発見された古生代シルル紀のクサ 同じく白亜紀の示準化石として重要なイノセ boids heine,I.cf.labiatus などが産出します． リサンゴの化石です．また秩父帯の先白亜系 ラムスは，二枚貝類の一種ですが，ちょうつ 鳥屋城層からは，多くのアンモナイト，イノ では，オリストリス（泥質の基質の中に取り がい線に歯がない点がほかの二枚貝とは違っ セラムス，二枚貝，ウニ，植物化石などが産 込まれた外来あるいは古期の岩塊) の石灰岩 ています．殻は薄く，共心円状まれに放射状 出します．アンモナイトでは正常巻のアンモ ろく 体からは，石炭紀～ペルム紀のフズリナやウ の肋や条線が発達しています．生活様式は， ナイトのほか，さまざま々な形態の異常巻き ミユリ化石，チャート岩体からは，同時代の 幼貝時の擬浮遊性から成長の途中で底生に変 の種が見つかっています．イノセラムスは， 放散虫やコノドントなど多くの化石が産出し わったと考えられています． Inoceramus schmidti,I.balticus toyajoanus ます．基質の頁岩や砂岩頁岩互層からは，中 《白亜紀の12階》 などカンパニアンに対比されるものが産出し 生代ジュラ紀の放散虫化石が産出します． 白亜系の模式地のある西ヨーロッパでは，ア ます． さらに白亜紀の地層になると，産出する化石 ンモナイトやイノセラムスなどにもとづいて 日高川層群寺杣層からは，図３・１に示すほ の種類や数が一段と増え，秩父帯の有田層や ベリアシアンからマーストリヒチアンまで12 かに，アンモナイトではHauericeras sp.aff ． 四万十帯の寺杣層，和泉山脈の和泉層群など 階の生層序区分と，特徴種で定義される化石 H．angustum，イノセラムスではInoceramus 化石の宝庫とも呼べるような化石産地がみら 帯が設定されています． (P.) rhomboides heinei,Mytiloides sp.cf. M. れるようになります．そしてこうした化石の 日本でも上部白亜系は，アンモナイトによる sublabiatus などが産出します．アンモナイト 研究の積み重ねから，化石を産出した地層の 細かい化石帯が設けられています．例えば， のYubariceras Y.kanei は化石帯の代表種で そといずみ 時代が確かめられ，紀伊半島をつくっている 図に示した外和泉層群から産するアンモナイ はありませんが，ヨーロッパでは中部チュー さまざまな地層･岩体の層序がたてられてき Didymoceras awajiense はカンパ ロニアンに特徴的とされている種です． トの中で， ました．表３・１が紀伊半島の層序表で，各 ニアン中･後期， ③四万十帯の貝類化石