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第四十回卒業証書授与式 式辞 大阪府立長野北高等学校第四十回卒 業証書授与式を挙行いたしましたとこ ろ、多数のご来賓・保護者の皆様のご臨 席を賜り、誠に喜ばしい次第です。皆様 には衷心よりお礼申し上げます。 最初に、本校学校協議会委員長 寺西 淳様から頂いた、諸君への激励の言葉を 紹介いたします。 前途遼遠 諸君の飛翔に期待をこめて、精いっぱい はばたき大人世界への巣立ちを。 本日、諸君は学び舎を後にするわけで すが、「卒業」を英語でグラディエーシ ョンということは知っていますね。ただ 英語にはもう一つ「卒業」にあたる言葉 としてコメンスメントという言葉があ ります。 コメンスメントはもともと「はじまり、 開始」という意味ですが、アメリカの大 学では「卒業」を表す言葉としてこちら の方がよく使われます。「卒業」に、「新 たな旅立ち」という意味を併せ持たせて いるわけです。 物事の終わりは常に新しい出発であ ることを考えますと、諸君の卒業にもコ メンスメントがふさわしいと思います。 諸君もよくご存知のクラーク博士は 札幌農学校を去るにあたって「少年よ、 大志を抱け」、さらにそれに続けて「・・・ 人間として当然備えていなければなら ぬあらゆることを成し遂げるために、大 志を抱け」と言っています。諸君一人ひ とりが、二十一世紀を担っていくという 気概を持ち、新しい日本を構築するとい う「大志」を抱き、それを実行してほし いと思います。 寺西委員長様ありがとうございまし た。 さて、以前、ベストセラーとなって話 題になった「ソフィーの世界」という作 品があります。哲学史を扱った書物がベ ストセラーになるのは異例のことで、そ のことも話題になったのでご存知の人 も多いのです。 すこし紹介しますとこの作品は一人 の少女のところへ不思議な一通の手紙 が届くところから始まります。手紙には ただ一言「あなたはだれ？」とあるだけ で、そこからこの長い作品は、哲学史の 世界へ入っていきます。 思えば、私は誰であるのか、自分はど こから来て、どこへ行こうとしているの か、という質問は、実に根元的な問いか けであり、私のような年齢になっても、 いまだに即答することができないもの です。むしろ年齢を得た分だけ、既成の 価値観や習慣の中に埋没して安定を得 ている自分に気づき愕然とするばかり です。 一般に青春期を過ぎるとこのような 青臭い瞬間に判断停止して、「生活」の 中に入っていく事が「大人になる」こと だとされています。しかしながら自分が 何者であるのかという厄介な疑問と粘 り強く付き合った人間だけが、実り多い 人生を送れるのではないかという気が します。いったい自分は今の自分でない 自分になりえるのかどうか、これは生き ている間、ずっと私たちにつきまとうテ ーマではないでしょうか。 本校を卒業していく諸君達は、まさに 長い旅のとば口に立っていると言えま す。諸君が当面している状況は、とりあ えずは初めての社会人としての未知の 経験の連続かもしれないし、あこがれの 学生生活かもしれません。状況はそれぞ れ異なっていても、そして日々の暮らし は「自己の探求」などという厄介なもの でないにせよ、やはりそれは自己を探求 する「旅」に違いないのです。 失敗する事、不運な事、憂鬱な事、「旅」 の途中には様々な出来事が諸君を待ち 構えていることでしょう。もちろん、楽 しい事や素敵な事もあるでしょう。とに かく、ありとあらゆることが人生には起 こりえます。 平和だ、平和だと言われてきた日本の 社会を根幹から揺るがす事件が多発す る昨今、社会のシステムの中にうまく適 応するための「処世術」ではなく、不安 定なこの世の中を生き抜くための「哲学」 が必要になってきたと言われています。 そのために多くを読み、考え、そして 行動してください。諸君自身の「哲学」 を発見してください。迷うこと、不安な 事は人生の常ですが、一段と高い世界へ 跳躍することもまた、諸君たちはできる はずですから。それが若さの特権でしょ う。諸君の健康と活躍を心から祈ります。 新しい門出に幸多かれ、若き旅人に