感染経路别予防策-札幌.PDF

病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2009.9 感染経路別予防策 感染経路別予防策とは、感染性病原体の感染経路遮断のために標準予防策に付 加して実施する感染対策である。感染経路別予防策は空気予防策・飛沫予防策・接触 予防策に分けられる。それぞれの病原体の感染経路を知り、その経路を遮断することに よって、より効果的な感染対策が実施できる。 1.空気感染予防策 空気感染とは、微生物を含む直径５μｍ以下の微小飛沫核が長時間空中を浮遊し、 空気の流れによって広範囲に伝播される感染様式をいう。空気予防策とは、空気感染を 起こす微生物に対して行う感染対策をさす。 １） 対象 下記の病原体による感染、あるいは検出された患者に対して実施する。 ・結核 ・水痘 ・播種性帯状疱疹 ・麻疹 ２）感染対策 （１）病室配置・移送 ・トイレが設置されている個室に隔離する。 ・病室は周囲の区域に対して陰圧が望ましいが、当院は陰圧個室を持たないため（一 般病室は等圧）、病室のドアは常時閉め出入りは最小限とする。 ・患者退院後の病室は、窓とドアを閉鎖したまま 2時間以上換気し、通常の清掃を行 う。 ・感染性を有する時期は室外に出ることは原則できない。特に結核患者で塗抹陽性 の排菌期間中は厳重に対策を遵守する。 ・検査等で移送を必要とする場合、飛沫の拡散を防ぐため、患者にサージカルマスク を着用させる。患者に N95 マスクは使用しないこと。また、移送先の部署には、事前 に感染対策に関連する患者情報の連絡をする。 2－１ 病院感染対策マニュアル 市立札幌病院 2009.9 （２）患者指導 ・咳をする時はタオル等を口に当て、飛沫を発生させないよう患者に協力を依頼する。 ・小児など抵抗力の弱い面会者の面会は基本的に制限する。面会者が病室に入室する 際もＮ95マスクを着用するよう依頼し、装着方法を実技指導する。 （３）患者接触時のＮ９5マスクの着用 ・水痘、麻疹患者には免疫を有する職員が優先して対応する(Ｎ95マスクは必要ない)。 やむを得ず免疫を持たない職員が対応する場合はＮ95マスクを着用する。 ・結核患者に対応する場合は、全ての職員がＮ95マスクを着用する。 ・医療従事者は病室前でＮ９５マスクを着用し、フィットチェックを行い入室し、病室を出て からＮ95マスクをはずす。 ・Ｎ95マスクは、形状、サイズにより数種類あるため、自分の顔面に合うものを選ぶ。 ・折りたたみ式Ｎ95マスクは、その都度使い捨てる。 ・カップ型 N95マスクはその都度使い捨てる必要はないが、水にぬれた場合や明らかな湿 性生体物質の汚染が見られた場合は交換する。１勤務帯（約8時間）を目安に廃棄する。 1勤務 1個の使用とし、ビニール袋に入れて保管する。 ・結核患者の発生頻度の高い部署は、フィットテストを行い自分の顔面にフィットする Ｎ95マスクを選んでおく。（フィットテストは感染管理推進室で実施できる。） 【図１：Ｎ95マスクの装着方法】 ＜折りたたみ式 N95マスクの装着方法：その１＞ ① マスクを上下に広げ、 ②マスクを上に掲げ、ゴム ③人差し指と親指で ④ゴムバンドを指で把持し ノーズワイヤーにゆるいカー バンドを垂らす 2本のゴムバンドを分ける ながら、顎の下にマスクを ブをつける あてる ⑤ゴムバンドを引き上 ⑥ゴムの角度は90度 ⑦ノーズクリップを指で ⑧マスクの辺縁のフィットを確認。息を吐 げ、頭頂部と首の後 になるようにする 押し、鼻 の形 に合 わ き空気の漏れ・眼鏡が雲らないことを確か ろに掛ける。 せる。 め、続いて息を吸いマスクの陰圧を確認。 2－2 病院感染対策マニュアル