橡3地形地质.PDF

３．北海道の地形・地質 ３．１ 地形・地質の概要 北海道の地形・地質は、北の稚内から南の襟裳岬に抜ける南北に走る中央部の山岳地 帯（道央地区）を軸として、西部（道南地区）と東部（道東地区）とに大別できる。 ・西部 ：渡島半島部にあたり、東北地方の日本海側と共通点が多いとされている地 域（道南地域） ・中央部：石狩低地帯の東方で、夕張山地・日高山脈・石狩山地・北見・天塩山地な どを含む地域で、宗谷岬から襟裳岬へと南北に連なる北海道の中軸部に当 たる地域（道央地域）。 ・東部 ：網走構造線以東で、千島列島弧の西南の基部にあたる地域（道東地域）。 ここでは、通称の道南，道央，道東地域を用いて解説を加えた。北海道の地形，地質 概要をそれぞれ図-3.1.1，図-3.1.2に示す。 図-3.1.1 北海道の地形概要１） 30 （１）道東地区 道東地区の地形は東部火山地域，根釧原野，白糠丘陵，十勝平野の４地形区に大別さ れる。東部火山地域は、知床火山群，屈斜路・阿寒火山群よりなる千島火山帯の延長部 と考えられる火山群で摩周，屈斜路湖などのカルデラ湖を有する。 根室半島から釧路にかけて、白亜紀末から古第三紀にかけての地層が分布する。火山 性砂岩と泥岩が主体で、天然記念物となっている根室の車石のように海底噴出の枕状熔 岩が含まれている。 この上位に石炭を挟在する古第三紀層が分布し、海底へとのびた石炭層が分布してい る。この地域は、千島列島弧の外弧を形成している。西方の白糠丘陵の地質も基本的に は根室半島に近似している。古第三紀層の上には新第三紀の堆積岩が累重し、この中に 火山岩が含まれていて、その頃の火山前線の位置を示すものと考えられる。 知床半島から屈斜路湖、阿寒湖を経て白糠丘陵の北方へと連なる地域は、新第三紀以 降、現在まで継続する火山地帯で、知床火山列と呼ばれることがあり、千島弧の内弧(火 山弧)の中の雁行火山列の一部を形成している。 これと、根室半島部との間には、釧路平野および根釧台地が広がっているが、これら は併せて根釧原野と通称されている。新第三紀末の海成層、厚い第四紀層が堆積してい る。知床火山列の屈斜路カルデラなどに由来する第四紀更新世の火砕流堆積物が広く分 布する。 図-3.1.2 北海道の地質概要１） 31 同じ火砕流堆積物は知床火山列の北方にも広がり台地を形成している。 北見の南東からは古第三紀の火山岩の存在が知られており、その頃の火山前線と関連 するとされている。 網走から白糠丘陵の西端にかけて、網走構造線と呼ぶ断層地帯があって、それが道東 と道央の地体構造区分の境界とされている。この構造線は、さらに北方のオホーツク海 中へとのびている。 （２）道央地区 道央部は広く、道東に比べてその地質構成は一層複雑である。北見山地と石狩山地は 新生代火山岩の卓越した地域である。基盤は白亜紀後期の砂岩，頁岩層で一部北見山地 の北端や、石狩山地の西端には白亜紀前期後半のメランジと呼ばれる混成地質体があっ て、その頃の海洋地殻の沈み込み地帯に相当すると考えられている。 北見山地の南東部には、白亜紀後期のメランジもある。これらは、古第三紀および新 第三紀初期の花崗岩によって貫かれており、全体を新第三紀の火山岩類がおおっている。 第四紀以降は大雪～十勝の火山列が活動の中心である。十勝岳を中心とする第四紀更新 世の火砕流堆積物は四方に広がり、上川盆地の南半分,富良野盆地,十勝平野の北半を埋め 尽くした。 これらの山地群より南方で、西は日高山脈,東は白糠丘陵に囲まれる地域には、新第三 紀の海成堆積物層が形成され、のちに陸成の第四紀層に引き継がれ、今日の十勝平野を 形成している。これに十勝岳起源の火砕流堆積物が狭在している。なお、日高山脈は北 海道の背骨になぞらえられることが多い。山稜部を中心に片麻岩などの変成岩が分布し、 山脈の東側に向かって次第に変成度を減じ、白亜紀後期の堆積岩に移行している。これ らに古・新第三紀の花崗岩類が貫入している。 （３）道南地区 道南も新第三紀・第四紀を通じた火山地帯である。ここには火山岩を含む白亜