2005年度日本流体力学会赏.PDFVIP

177 [巻頭言] 2005 年度日本流体力学会賞 日本流体力学会賞候補者選考委員会委員長 小 森 悟 日本流体力学会では，「流体力学論文賞」， 「竜門賞」および「流体力学技術賞」の3 つの学会賞を設け，会員の 方々の表彰を行っております．流体力学論文賞は，過去 10 年以内に発表された流体力学に関する論文で，これが 流体力学の進歩発展にとって独創的な業績であり，顕著な貢献をなしたと認められた論文の著者に，竜門賞は，過 去 10 年以内に流体力学に関する論文を発表し，これが流体力学の進歩発展に寄与し，独創性と将来性に富むと認 められた当該年度末において 40 才未満の若手会員に対して授与されます．また，流体力学技術賞は，過去 10 年以 内に発表された流体力学に関する画期的な新技術または新製品（ソフトウェアを含む）を開発した者に授与されま す．本年度は，会員の方々にメールにて積極的な候補者推薦および自薦をお願いしました結果，論文賞 5 件，竜門 賞 6 件，技術賞 6 件の推薦および自薦による応募を頂くに至りました． 流体力学を中心にした各分野で著名な 9 名の委員の方々に私を加えた 10 名で選考委員会を構成しました．審査 の公正さを保つため，選考委員に関係する共同研究者や師弟関係にある応募に関しては，審査をはずれるものとし ましたが，今回はこれに該当する応募はありませんでしたので，全員が審査に加わりました．また，特定の分野の 視点からだけではなく多面的な検討を行うため委員全員による評価と 3～4 名の委員によるより専門的な見地から の評価の両方を実施しました．さらに，これらの評価を基にして，各賞への適合性も考慮して慎重な審議を行うこ とにより，以下に示すように200 ５年度の学会賞を選出しました． 【竜門賞】 の天気変化を客観的に予測するうえでは全球大気の 対象論文はもとより参考論文も含めて候補者の研 数値モデル（以下全球モデル）は不可欠である．こ 究内容および将来性などについて慎重な審査を行っ のような予測を行ううえでの大きな障害の 1 つは， た結果，下記の2 名の方々を選出するに至りました． 全球モデルが水平方向の広がりが 10km 程度しかな 以下に，各氏の受賞業績，受賞対象論文，選考理由 い積乱雲を表現するだけの解像度を持たないことで を示します． あった．積乱雲は，熱・水蒸気・運動を鉛直方向に 受賞者：富田浩文氏（海洋開発研究機構地球環境フ 輸送して大気の鉛直構造の決定に寄与するだけでな ロンティア研究センター 研究員） く，台風や低気圧などの総観規模／中規模擾乱と相 受賞業績：正 20 面体準一様格子を用いた非静力学大 互作用することにより，これらの擾乱の発達・組織 気大循環モデルの開発 化に寄与する重要な働きをする．従来の全球モデル 対象論文：Tomita, H., M. Tsugawa, M. Satoh, and K. では，何らかの仮定に基づいて，積乱雲の効果を 「解 Goto, Shallow water model on a modified icosahedral 像できるスケール」の物理量でパラメタライズして geodesic grid by using spring dynamics, きた． Journal of Computational Physics, 174, 579– 613 (2001). 受賞者らのグループは，地球シミュレータの誕生 Tomita, H., and M. Satoh, A new dynamical framework を契機に積乱雲を解像する全球モデルの実現を志し， of nonhydrostatic global model using the icosahedral grid, いくつもの困難を乗り越えて水平解像度 3.5km の全 Fluid Dynamics Research, 34, 357– 400 (2