1985年5月号No050-JAXA宇宙科学研究所.PDF

ISSN0285-2861 =旦E££ a No50 宇宙科学研究所 1985.5 く研究紹介〉 宇宙構造物の構造概念 宇宙科学研究所名取通弘 ある程度固定化されたと言っていい構造物の考え 宇宙空間で構造物の受ける荷重は，シャトルや スペースステーションのような高度で， 1m あた 方を捨てる必要がでてまいります。そこに，宇宙 構造物の構造概念という研究分野の出発点がある り 0.1 グラム重といった小さなものです。大変薄 くなっているとはいえ，それは空気による抗力の と言っていいでしょう。 せいで，静止軌道やさらに遠くの空間では太陽輯 数々のイラストに紹介きれている宇宙構造物は， 射圧による荷重が支配的となり，その値はもっと がっしりしたもののように私たちの目に映ります 二桁も小さなものになってしまいます。そこで構 が，実は 1 m あたり数百グラムしかないような， それこそビニールのシートのようなものなのです。 造物としては，シャトルのドッキングや自分をコ ントロールすることにより生じる荷重の方が大き もちろん，人の住むょっな所はしっかりしたもの くなり，それに耐えられれば十分で，あとは非常 に造るわけですが，あとの部分はコントロールで に柔軟なものでよいといつことになります。また きる程度にフニャフニャでよいのです。当然，カ 太陽発電衛星のように，ごく薄〈分布している太 プトンフィルムなどの膜面を使った構造物が様々 陽エネルギー(1.4 ワット 1m) をつかまえること に使われてまいります。膜面を構造体として安定 を考えますと， 10数km のオーダーの構造物でない に機能させるには，張力をかけるのが一番です。 と意味がないということになります。そのような この張力に対応して圧縮力を受け持つ部分，たと 拘束のない自由さに積極的に対応していくために えば周辺の枠組とかトラス構造体などから，通常 は，地球上において私たちが今までに持っていた， の宇宙構造物ができあがります。もちろん，張力 -1 体形状トラスの稜を短くしたり長くしたりするこ を遠心力やごくわずかのカボス圧力により与える考 え方もあります。直径が 6 km もあるへリオジャイ とによって，研究が進展していきました。このビ ロとか，そのほかパラボラ膜面をそのような力で ームのねじれを少し戻してやると，写真 2 の一番 安定