芥川龙之介‘俊宽’考.pdfVIP

Title芥川龍之介「俊寛」考 Author(s)小澤, 保博 Citation琉球大学教育学部紀要(70): 153-163 Issue Date2007-01 URL Rights 芥川龍之介「俊寛」考 小澤保博． AconsideronRyunosukeAkutagawa1sSyunnkann ＹａｓｕｈｉｍＯＺＡＷＡ． １ ものでこ番煎じの汚名を免れ得ないであろう。こ 「六の宮の姫君」（｢表現」大正11年８月）につ の件については芥川龍之介自身が、「無限抱擁」 いては「この題材を捉えたのは流石に彼の眼光の の主題を滝井孝作から借用して「薮の中」を創作 鋭さを語るものであろう。ただ原話がすぐれてい したことに関して釈明している（｢純潔一『薮の るだけに、彼の手柄はそれだけ少ない｡」（吉田精 中』をめぐりて－滝井孝作） 一「芥川龍之介」新潮文庫）という評価があるが、 「澄江堂雑記」（十二「俊寛｣）は、小説「俊寛」 ｢今昔物語」（｢巻十九第五話」「巻十五第四十七話｣） の執筆数ヵ月後に書かれたもので作者自身による の同じ素材を典拠にした堀辰雄「噛野」（｢改造」 自作解説として読むことは、可能である。「新潮」 昭和16年12月）さらに菊池寛「六宮姫君」（｢新 (大正11年４月）掲載のこの解説に拠れば、芥川 今昔物語」昭和21年11月）の三人の作品を比べ 龍之介「俊寛」の素材は、「平家物語」「源平盛衰 た場合、芥川龍之介「六の宮の姫君」が優れてい 記」近松門左衛門「平家女護島」倉田百三「俊寛」 て、三作品の作品評価はおそらく発表順であろう。 菊池寛「俊寛」等の作品である。この中で作品執 これに反して「俊寛」（｢中央公論」大正11年 筆の直接動機になったのは、第一高等学校の同級 １月）は、倉田百三「俊寛」（｢白樺」第一幕、大 生倉田百三、菊池寛の二人の「俊寛」である。こ 正７年３月）さらには菊池寛「俊寛」（｢改造」大 のことは芥川龍之介「俊寛」（－）で、二人の先 正10年10月）の影響下に執筆されたもので、作 行作品「俊寛」を批判的に要約して紹介している 品評価はこれもおそらく発表順であり、芥川龍之 ことからも理解できる。 介「俊寛」が一番見劣りするであろう。 「或琵琶法師が語ったのを聞けば、俊寛様は御 「彼の知恵のいたずらとも云うべき作品である。 歎きの余り、岩に頭を打ちつけて、狂ひ死をなす 俊寛の新解釈は、当時倉田百三、菊地寛によって