江户遗迹研究会会报no120.pdfVIP

2009年10月30日発行 江戸遺跡研究会会報 No.120 江戸遺跡研究会 /edo/ 江戸遺跡研究会 第123回例会のご案内 日 時：2009年11月11日（水）19:00～ 内 容：土本 匠氏 （大成エンジニアリング） 「青山学院構内遺跡第４地点の調査概要－伊予西条藩松平家の上屋敷」 会 場：江戸東京博物館 学習室2 交 通：ＪＲ総武線両国駅西口改札 徒歩３分 都営地下鉄大江戸線両国駅（江戸東京博物館前）Ａ４出口 徒歩１分 問合せ：東京大学埋蔵文化財調査室 （堀内・成瀬） 03-5452-5103 江戸遺跡研究会公式サイト /edo/ - 1 - ◇江戸遺跡研究会第121回特別例会は、2009年7月20日（月）午後1時より江戸東京博物館学習室に◇ ◇て行われ、このうち鈴木伸哉氏より以下の内容が報告されました。 ◇ 木製品の用材研究の現時点での到達点 鈴木伸哉 （千代田区立四番町歴史民俗資料館） 17 世紀はじめの江戸城およびその城下町の建設には大量の木材が必要となり、幕府はこれを木曽川 ・天竜川流域をはじめとした全国の天然林から調達したことが知られている（所, 1980）。こうした都 市建設と、それに引き続く都市人口の増加や度重なる火災などにより、近世の森林資源は全国的な枯 渇の状況に陥り、木材の生産・流通も全国規模に拡大したことが推定されている。また、幕藩体制を 支えた身分制度や階層差が木材利用にどのような影響を与えたかが問題とされる。 一方、木材消費の直接的な証拠である出土木製品については、原（1992）や越村（2003）による分 類・集成がなされているが、これらの分類に認められる木製品の種類は多岐にわたり、中世以前と比 較すると、この時期に木材利用は多様化を遂げたことがわかる。下駄、桶・樽、漆器や、土蔵・穴蔵 などの木製の遺物・遺構については豊富な研究の蓄積があるが、資源利用の観点にたった出土木製品 の材質に関する調査・研究は山田（1993）や松葉（1999）など、わずかにとどまる。 こうしたなか、発表では、これまでにおこなってきた研究（鈴木・能城, 2004, 2006, 2008a, b, 2009） を中心に、出土木製品の樹種同定をはじめとした用材分析の方法について概観した。また年輪年代学 やそれを応用した産地推定を中心に、最近の新たな研究動向についても紹介した（大山・鈴木伸 ・八木 ・鈴木三, 2008; 星野・大山・米延, 2009; 星野・米延・安江・野堀・光谷, 2006）。 1. 江戸の墓地遺跡出土木棺用材から推定する近世の木材利用史（鈴木・能城,2004, 2006,2008a,2 009） 東京都内の 4 つの墓地遺跡から出土した、江戸時代初期から幕末にかけて形成された円形木棺（上 面観が円形で、結桶形の構造をなす座棺）と方形木棺（上面観が正方形または長方形で、箱形の構造 をなす座棺または寝棺）を主体とする一般都市住民層の木製埋葬施設の構築材およそ2,700 点の樹種同 定と形態の観察に基づき、近世の江戸における木材利用の変遷と森林資源や身分・階層差との関わり について検討した。 調査対象と結果 [東京都中央区八丁堀三丁目遺跡II] 日蓮宗朗惺寺の墓域に比定される17 世紀前半を主体とする円形木棺・桶製骨蔵器484 基と方形木棺 41 基の部材、1395 点の樹種を同定した。円形木棺・桶製骨蔵器にはサワラを中心とした材が用いられ ていた。方形木棺にはスギやヒノキ、サワラなどの材が用いられており、使用される樹種にばらつき があることから転用棺である可能性が高い。円形木棺の各部