第Ⅳ章自然科学分析-大阪文化财研究所.PDF

第Ⅳ章　自然科学分析 　本調査地では、最下位の層位で干潟と思われる堆積層がみられ、その上位には河川性の氾濫堆積物 が認められている。今回の分析調査では、調査地における古地理および周辺植生に関する情報を得る ことを目的として、放射性炭素年代測定、珪藻分析、花粉分析、葉同定を実施した。 　第 1 節　試料 　調査地点の堆積層の層相および分析試料採取層準を図20に示す。分析試料は堆積断面より層位ごと に不攪乱塊状試料として採取されている。図20中の層相は、この塊状試料の層相に基づいている。 　放射性炭素年代測定は、第14b層中に挟在する植物遺体中の樹木葉について実施する。花粉・珪藻 分析は、第 7 層、第 9 層、第10層、第12層、第13層、第15層について実施する。葉同定は第14層中 に挟在する植物遺体層よりブロック状に採取された堆積物（17× 9 × 4 ㎝、568.5g）について実施する。 この植物遺体層の厚さは1.5～ 2 ㎝で、多数の常緑広葉樹の葉がほぼ水平に堆積している。出土遺物 から推定される堆積層の年代は、第11層が弥生時代中期、第 8 層が飛鳥～奈良時代、第 5 層が平安時代、 第 3 層が中世、第 2 層が近世である。 標高（m） 年代 層位 分析層準 層相 現代の盛土 0 2.0 1 珪藻 14C 褐灰～灰　細礫・粗粒砂混り極細粒砂質泥とその偽礫.人為的攪拌. 凡例 近世 2 花粉 葉 褐灰～灰　細礫・粗粒砂混り細粒砂質泥・泥質極細粒砂.偽礫状.微細な炭片含む.人為的攪拌　 中世 3 褐灰～灰　中礫・粗粒砂混りシルト質細粒砂とその偽礫.人為的攪拌.　 ｼﾙﾄ･粘土（泥） 平安後期 4 褐灰～灰　極粗粒～粗粒砂混り泥～泥質細粒砂の偽礫.整地層　 5 褐灰～灰　泥混りシルト質細粒砂 極細粒～細粒砂 6 褐灰　不明良な葉理をなす中粒～細粒砂.炭含む 中粒～極粗粒砂 7 オリーブ灰～灰　細粒砂の葉理、植物遺体葉理、有機質泥葉理を挟在する泥 1.0 細礫 飛鳥～奈良 8 オリーブ灰　粘土質シルト.生物擾乱.根成孔隙が分布 小礫 9 オリーブ灰　極細粒砂混りシルト　生物擾乱.根成孔隙が僅かに分布 水平葉理 斜交葉理 10 黒褐　泥.　根成孔隙. 弥生中期 11 褐灰　極細粒砂混り泥.生物擾乱.根成孔隙 偽礫 0.0 12 暗灰　極細粒砂混り有機質泥.生物擾乱.根成孔隙 腐植質土壌 13 暗灰　有機質泥　黄灰極細粒砂の薄層を挟在 木材