日本体育学会体育哲学専门分科会シンポジウムA日本体育学会体育哲学専门分科会シンポジウムA.pdf

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日本体育学会体育哲学専门分科会シンポジウムA日本体育学会体育哲学専门分科会シンポジウムA

日本体育学会体育哲学専門分科会シンポジウムA 神戸大学、2007.9.7 東洋的身体論の試み:西洋と東洋の相克 樋口聡(広島大学) 1.東洋的身体論という問題 東洋的身体論と言った場合、すぐに思い至るのは、湯浅泰雄氏の東洋的身体論です。彼 の著書『身体論:東洋的心身論と現代』(講談社学術文庫、1990 年)において、湯浅は、 「西洋の伝統的身体観においては、心的なものと身体的・物質的なものを分析的に区別す る傾向がつよい1 」と言います。それと対比的に、心身の一体性を強調するのが東洋的身 体論の特徴であると言います。このことだけを取り上げますと、それはすでに常識となっ た見方で、しばしば、西洋的心身二元論に対する東洋的心身一元論などと言われることが あります。そして、体育哲学やスポーツ哲学にとっては、身体を精神の下に置く心身二元 論ではなく、心身一元論が重要であるなどということが語られることもありました。しか し、このような見方は、あまりに粗雑です。 湯浅は、「東洋と西洋の哲学の理論構成の方法論的基礎には、いちじるしい相違がある。 この点をよく考えないと、東洋の身体論の独特な性質をとらえることはできない2 」と言 います。このことは何を意味するかと言うと、仮に西洋的身体論と東洋的身体論といった ものが考えられたとして、それらは同じ前提のもとで、言ってみれば同じ土俵の上で出て きた二つの対立する考え方ということではない、ということです。東洋と西洋の哲学の理 ...... 論構成の方法論的基礎には、著しい違いがあるのです。このことについて、湯浅は、ユン グを引きながら、東洋は、西洋的意味における「形而上学」を決して生んだことはなかっ た、と言います。西洋的意味における「形而上学」とは、その源泉として、一つはアリス トテレスの形而上学を、もう一つはキリスト教神学を考えることができるような性格のも のです3 。一方で、東洋思想の哲学的独自性を、湯浅は、その基礎に「修行」の考え方が 置かれていることに見ています。真の哲学的知は、単なる理論的思考によって得られるも のではなく、「体得」あるいは「体認」によってのみ、認識できるものであるというのです 4 。 1 湯浅泰雄『身体論:東洋的心身論と現代』講談社学術文庫、1990 年、20 頁。 2 同書、21 頁。 3 同書、98-99 頁。 4 同書、21 頁。 1 要するに、理論構成の意味が全く異なるのですから、西洋的身体論と東洋的身体論が同 じ土俵の上で取っ組み合うなどということは、単純にはできない相談のはずです。両者は 異なるゲームであり、それを一つのゲーム・マッチの中に押し込むことはできません。私 .. に与えられたテーマの「西洋と東洋の相克」というサブタイトルも、そうした違和感にお いて見ざるを得ないように思います。 東洋と西洋の哲学の方法的基礎の相違に十分に配慮することは、決して簡単なことでは ありません。東洋的身体論の具体例として取り上げられる、武道、芸能、中国哲学、禅仏 教などにおける身体をめぐる議論は、いわゆる西洋的身体論と同じ問題意識から生まれた ものではありません。芸能などでの議論を、「東洋的身体論」として解釈しようとすること が、そもそも東洋的ではなく、まさに西洋的なのです。この方法的差異に気づいていて注 意を促していた湯浅自身が、世阿弥のテキストから「身体」の問題を語り、その際、西洋 の精神-身体の二元論図式に無意識にも依拠してしまっていたことを、私は指摘しま した。 それについては、『身体教育の思想』(勁草書房、2005 年)を参照してください。 山口一郎氏も、自身の著書『文化を生きる身体-間文化現象学試論』(知泉書館、2004 年)で、湯浅の東洋的身体論を取り上げています。そこで、伝統の異なる考え方を対話に もたらそうとする研究の困難さを指摘し、そもそも考えるということが、生活の中でいか なる意味と価値をもつのか、それが改めて反省されなければならないと言います5 。身体 についての従来のデカルト的考え方を超え、東洋に伝統的な新たな身体の捉え方を呈示す

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