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研究代表者 東北大学多元物質科学研究所 教授 有山達郎 共同研究者 東北大学多元物質科学研究所 准教授 井上 亮 1. 重金属は種々の毒性を有しており，特に六価クロムは鼻中隔穿孔や肺ガン・副鼻腔ガン，接 触性皮膚炎の原因となる 1)。また，ホウ素は植物や動物の成育に必須な元素であるが，土壌に 吸着しやすく，過剰量の摂取は農作物の生理障害等の毒性を示す 2)。他方，フッ素は歯牙フッ 3,4) 素症，骨硬化症，甲状腺障害，腎臓障害等の原因となることが報告されている 。 クロムを含む廃棄物として，製鉄所から排出されるステンレススラグやステンレス鋼板の酸 洗スラッジ，都市ゴミを焼却処理した際にダストフィルターから回収される飛灰等があげられ る。これら廃棄物のうち，ステンレススラグ中の酸化クロムは還元炉によって還元され，Fe-Cr-C メタルとして回収されるが，工場の操業条件によっては大量に排出されるステンレススラグの 一部が還元処理されるに過ぎないため，還元処理されなかったスラグは管理型埋立地に搬送さ れる。しかし，近年，この管理型埋立地の枯渇が懸念され，処理費の高騰が続いている。これ らの産業廃棄物からの六価クロム溶出量を土壌環境基準値以下に安定化処理できれば，管理型 埋立地への搬送が不要となり，路盤材等の土木材料に活用できる。すなわち，スラグ処理コス トの削減が達成されるとともに，環境調和型ステンレス製造プロセスの構築が可能となること から，効果的な六価クロム安定化処理法の開発が強く望まれている。 一方，P O ，Cr O ，Fe酸化物が含まれていない製鋼スラグを冷却した際には，2CaO･SiO 鉱物 2 5 2 3 2 相のα’→γ変態 によりスラグが粉化し，スラグ処理作業が著 しく困難になることが知 られてい る。このスラグ粉化は還元性の二次精錬スラグに特徴的な現象であり，その粉化抑制剤 として 酸化ホウ素が有効であることが報告されている 5) が，二次精錬スラグを路盤材等の土木材料に 利用するためには，ホウ素溶出量の環境基準をク リアする必要がある。 これらの理由から，路盤材等の土木材料として製鋼スラグの利材化を図る場合，製鋼スラグ からの有害元素の溶出を抑制することは，環境保全 のために重要である。本研究は，クロム， ホウ素および フッ素を含む合成スラグを対象 に，1) 高温からの冷却・凝固条件，2) スラグ組 成，3）水和処理条件，が各元素の溶出値におよぼす影響 を検討 した。 水 和反応 生成物は大別 して ① CaO-SiO -H O，② (tricalcium-)aluminate ferrite ･tri 2 2 － 1 － (sulfate, hydroxide, etc.)･hydrate(以下，AFt 相 と略称す)，③ (tricalcium-) aluminate ferrite ･mono (sulfate, hydr oxide, etc.)･hydrate (以下，AFm 相 と略称す) ，④ cubic hydration product，⑤ simple hydrate，および⑥ apatite であり，これら水和物中の各イオ ンサイ トと固定化させたい陽イオンや陰イオンが置換することにより安定化が起 こる。以下に， それぞれの水和物によるイオ ン固定化機構を述べ る。 2 2 3CaO･SiO , 2CaO･SiO 等の水和反応性に富む calcium silicate が水 と反応することにより， 2 2