长瀞地质観察メモ.PDF

長瀞 地質観察メモ 日本列島は，海の彼方から押し寄せてくるプレートと， 大陸が割れて広がった日本海とのせめぎあいの結果，現 在の姿のようになったと考えられています。 長瀞の結晶片岩は，海洋プレートの沈み込みによって 地下深部まで引きずり込まれ高圧による変成作用を受け たあと，再び地上に姿をみせてくれている岩石です。 今日は，長瀞の河原の石ころを手にとって，日本列島 のダイナミックな歴史の一場面に想いをはせてみましょ う。 1 地下深部をみてきた付加体 ―秩父長瀞の結晶片岩（岩畳）― 薄い板が何層にも積み重なってみえる岩石で，ちょうど年輪を刻んだ古い木材のようである。全 体に灰色であるが，暗褐色や緑色にみえるところもある。岩石は結晶片岩で，高圧条件下で形成さ れた変成岩である。こうした岩石が荒川に沿って広く露出しており，平らな面をつくっていること から岩畳の名で知られている。 結晶片岩は，泥質岩起源の黒色片岩，苦鉄質火山岩起源の緑色片岩，チャート起源の石英片岩や 紅簾片岩などからなる。同様な変成岩は，関東山地から東海・紀伊半島を経て，四国･九州へと連続 して分布しており，三波川帯 と呼ばれている。現在，地表にある変成岩は，もとは地表付近の地層 が地下深部に持ち込まれて変成作用を受け，後にまた地表へ持ち上げられたものである。三波川帯 は，もともとは付加体として形成され，海洋プレートの沈み込みで地下深部へもぐり込み，白亜紀 後期の８０００～７０００万年前頃に，海底の大山脈・海嶺の沈み込みにともなって，地下から上 昇し，ついに陸上の地質体の中へ衝上したと考えられている。 岩石が高圧型の変成作用を受けると，再結晶で生じた鉱物が一定方向に配列し，特徴的な線状や 面状の構造（片理という）をもつ結晶片岩ができる。高変成度になると再結晶が進み粗粒化し，縞 状の片磨（へんま）構造が発達する。高圧型変成作用が起こる場としては，海洋プレートが沈み込 む地下深部しか考えられず，源岩は付加体とみなせる。変成岩には，変成作用のはじまりから，最 高温度で平衡に達し，その後地表にあらわれるまでの長い歴史が記録されている。 問題は，なぜ高圧型変成岩が地下深部から地表に出たかである。海洋プレートの沈み込みが続く と，変成岩の下に後の付加体が次々に底づけされ，先にできていた変成岩体を持ち上げる。地表は 削剥され，変成岩もついに地表に顔を出すと考えられた。しかし，これではどの時代の変成帯でも 地表にあってよいはずだが，実際には限られた時代の変成帯しかみられない。そこで，東京大学の 磯崎行雄氏と東京工業大学の丸山茂徳氏は，間歇的な変成帯の露出と隣り合った地質体との温度・ 圧力のギャップは，海嶺の沈み込みという非定常的な事件によって，高圧型変成岩が付加体ととも に地表にしぼりだされたとするモデルを提唱している。 中央構造線と領家変成帯・三波川変成帯 中央構造線を境に，内帯の 領家（りょうけ）変成帯 の岩石と外帯の 三波川（さんばがわ）変成帯 の岩石 が接しています。 両帯の岩石は，中央構造線 の両側に，関東から九州ま で並んで続いています。 2 三波川変成帯 三波川変成帯の岩石は，板を重ねたような「結晶片岩」類です。ジュラ紀の付加体の岩石が，白亜紀に 地下１５～３０km で，低温高圧型の変成岩になり，のちに地表に露出したものです。 「付加体」とは，大陸プレートの岩石のうち，海洋プレートの沈み込みにより，海洋プレートの表層がはぎと られ，渾然一体となって大陸につけ加わった岩石のことです。付加体は、日本列島の土台になっています。 「変成岩」とは、岩石が、もともと出来た時とは異なる温度や圧力を受け，固体のまま化学反応が進み，もと の岩石とは異なる鉱物の組み合わせになったものです。長瀞の結晶片岩類は，三波川変成帯の代表的岩 石です。 領家変成帯 領家変成帯の岩石は，高温型の広域変成岩と花崗岩などの貫入岩（地下でゆっくり冷え固まった火成 岩）です。 領家変成岩は，ジ