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韓国における構造改革 ――教訓と日本への示唆―― 2004 年 1 月 14 日 李憲宰 （イ ・ホンジェ） 韓国元財政経済部長官 韓国元金融監督委員会委員長 はじめに 1997 年の通貨危機によって、韓国は、経済における構造的脆弱さを露呈し、国家的破綻 の危機に直面しました。これに対し、経済を再建し、過去数十年にわたり懸命に達成して きた経済成長を取り戻すべく、我々は多大な努力を払ってまいりました。経済に未曾有の 額の公的資金を注入するとともに、危機克服に向けて国民全体が一致団結して痛みと困難 の伴う改革に耐えてきました。 喜ばしいことに、それ以降、韓国は実に多くのことを達成してまいりました。改革完遂 までまだやるべきことは数多く残されていますが、本日、ここで、韓国での経験から得た 洞察と教訓を皆様にお話しできることを嬉しく思います。 韓国の構造改革は、金融部門、企業部門、労働市場部門、政府部門 （公的企業を含む） の４つの部門で実施されました。しかしながら、時間も限られていることですから、ここ では金融と企業の２部門における構造改革に話を絞りたいと思います。というのも、この ２つの部門は、金融監督委員会委員長及び財政経済部長官として私が直接取り組んできた 領域だからであります。 特に、第一に、改革成功への前提となる諸条件について、第二に、構造改革とマクロ経 済政策の相互関係に関する私の考え、第三に、改革のスピードとやり方に関して得た教訓 について、そして最後に、金融 ・企業部門の業務慣行の再構築及び注入した公的資金の回 収という現在も残されている課題について指摘します。 改革成功の条件 １．問題を認めること：構造改革を開始するうえでの最初でかつ最大の課題は、社会のあ らゆるセクターに問題を問題として認めさせ、改革が絶対に必要であるということを 1 認識させることでありました。危機克服のために抜本的処理を必要とする金融機関と 企業は、改革に抵抗し、自らの問題を隠そうとしました。強力かつ断固たる政治的リ ーダーシップが必要でした。また、そうした未曾有の規模の改革を実現するためには、 国民の支持と合意が不可欠であり、それなくしては一歩たりとも前進することはでき ませんでした。 幸運なことに、危機勃発時に韓国大統領に選出された金大中前大統領は、この問題 がいかに重大なものかを理解しておりました。金大統領は国民に対して、一致団結し て苦難の道をともに歩むことを要請しました。もし、こうした最高指導者の支えがな かったならば、改革は多くの障害に直面していたことでしょう。同時に、そうした危 機に際して多大な犠牲を受け入れた韓国国民に対して、私は大いなる尊敬の念を払う ものであります。 ２．透明かつ客観的な手続き：金融 ・企業部門の改革における最重要課題のひとつは、存 続可能な金融機関 ・企業については存続させ、その一方で、存続不可能なものについ ては市場から退出させることでした。これは、金融機関 ・企業の資産価値と将来的な 存続可能性についての評価が伴います。しかし、この過程は、実に困難な課題である ことが判明しました。そのときまで韓国では、こうした評価は機械的でおざなりの方 法でしか行われてきませんでした。それまでのやり方は、単に過去の業績だけを評価 対象とするものであり、問題となる企業が将来的に存続可能かどうかを予測して評価 することは含まれていませんでした。新たな基準づくりが、私と私のスタッフに委ね られたのです。 御想像がつくでしょうが、影響を受ける諸機関は、それこそまさに存亡の危機に立 つわけですから、全力をもって抵抗しました。したがって、議論の余地がないほどに 非常に透明で首尾一貫した客観的な評価基準と手続きを確立することが、決定的に重 要でした。また同時に、国民からの支持を得ることも必要でした。 それは決して容易な