石西礁湖自然再生全体构想环境.pdf

～ 島人の宝 豊かな海を守る ～ 石西礁湖自然再生全体構想 平成１９年９月 石西礁湖自然再生協議会 （表紙写真：左上シモビシ、右上ウラビシ、左下マイビシ、右下カタグァー） はじめに せきせいしょうこ 石西礁湖は、石垣島と西表島の間に広がる日本で最大規模のサンゴ礁域で、西表石 垣国立公園に含まれています。 我が国では珍しい準堡礁型のサンゴ礁が発達 している石西礁湖は、高緯度地 域にありながら、フィリピン海域や世界最大のサンゴ礁であるオーストラリア のグレートバリアリーフと肩を並べるほ ど多くのサンゴの種数が記録されて いることから、国際的にも重要なサン ゴ礁生態系です。また、北側を流れる黒 潮の影響を受け、サンゴ礁生物の種多様性が国内で最も豊かな海域であり、か つ、その黒潮に乗って沖縄島などの高緯度域へのサンゴの幼生等の供給源と なっている可能性があり、我が国のサンゴ群集を支える上で重要な役割を果た していると考えられています。地元の人々にとっても漁業や観光などの地域経 済を支える存在であり、多くの人が活動する場となっています。 その石西礁湖が、赤土流出などの陸域からの環境負荷、高水温による白化、 オニヒトデの大量発生等により、攪乱を受け、大きく衰退しています。環境省 が平成 17 年 3 月に策定した「石西礁湖自然再生マスタープラン」によると、サンゴ 被度が 50％以上の高被度域は、1980 年頃と比較すると約 18％にまで減少した と言われています。 このような状況から、「かつてのすばらしい石西礁湖のサンゴ礁を取り戻した い」、「もっと美しい海を見てみたい」、「サンゴとともに生きる地域をつくりたい」 という熱い思いを持った多くの人が集まり、石西礁湖自然再生協議会が発足し たのは平成 18 年 2 月のことです。協議会には、地元住民、市民団体（NPO、 NGO）、漁業や観光関係の団体、研究者、行政機関など多様な主体が参加して います。今までに 5 回の協議会が開催され、どのような目標に向かって進むべ きか、どのような活動をすべきか、それぞれの構成委員ができることは何か、 などについて活発な議論を行い、この 「石西礁湖自然再生全体構想」（以下、「全体 構想」という。）をまとめました。 全体構想は、石西礁湖の自然再生事業が進むべき方向性を示したものです。今後、 この全体構想に基づいて、各事業実施者により実施計画が立てられ、サンゴ礁の 再生を目指した事業が進められることになります。刻々と変化する海の中に息 づくサンゴの再生過程には、予期せぬ事態が起こることもあるでしょう。私たち は活動を随時見直しながら再生に向けた取組を進めていきたいと思います。 自然再生事業は立場が異なる多くの方々との連携が不可欠です。協議会で真 摯な議論を継続することに加えて、地域の人たちと十分な話し合いをして、この 事業の重要性に対する共通の認識を持つ ことが出来るよう最大限の努力をし なければなりません。この全体構想が、今後の議論に大いに役立つことを期待 します。 2007 年 9 月 石西礁湖自然再生協議会 会長 ＜石西礁湖自然再生全体構想 目次＞ はじめに 第 1 章 石西礁湖自然再生の取組に至る背景と経緯 1 1． 石西礁湖サンゴ礁生態系の特徴・重要性・役割 1 (1) 世界における日本のサンゴ礁 1 (2) 日本における石西礁湖の位置づけ 1 1) 日本のサンゴ礁生態系の概観 1 2) 石西礁湖サンゴ礁生態系の特徴 4 3) サンゴ礁生態系の恩恵 6 2． 石西礁湖サンゴ礁生態系の危機の現状 8 (1) サンゴ群集の分布とその変遷 8 (2) サンゴ礁生態系の現状 12 (3) 関連する生態系の現状とその変遷 14 3