海盐系多相平衡と利用-J-Stage.PDF

進 歩 総 説 海 塩 系 多相 平 衡 と利 用 本 山 正 夫* Phase Equilibria in Aqueous Oceanic Salt System and Their Use Masao MOTOYAMA* 解度の気圧依存性に関す るデータを集め,系 統 化 し 1. ま え が き た.い ろいろな圧力下での40以 上の系について溶解 海塩系多相平衡の実験に関する論文は近年減少の傾 度の気圧変化を4タ イプに分類 し,溶 解度 気 圧 係 数 向がみられる.こ の原因は,基 本的な研究がすでにほ (PSC=(∂ms/∂p)T,ms=塩の モ ル 濃 度,p=圧 力 とんど発表され,意 義ある研究がそれほど簡単にでき (MPa))を 算出した.NaCl,硫 酸 カリウム(K2SO4) などは第3タ イプ(圧 力の増加に伴い,PSCが プラス なくなったためと思われる.一 方,Pitzerら の電解質 か らマイナスに変化する)に 属 し,こ のPSCの 相違 溶液モデル(1973年)を ベースにした,溶 解平衡を推 算する熱力学的モデルの開発があり,25℃ における種 は水溶液の構造モデルを用いて解釈 された. 種の多成分系の研究が活発に行われている. 以上の他に,水 への塩化マグネシウム(MgCl2)溶 解 前報1)に引き続き,1982年7月 から1984年8月度(380℃ま まで)4),K+∥Cl-,SO42--H2O系(25,50お でのChemical Abstracts(以 下Chem.Abtsr.とよび75℃)5),K+∥CO32-,SO42--H2O系(25,50お略記 よ する),科 学技術文献速報化学・化学工業編(外国編), び75℃)6),Mg2+∥OH-,SO42--H2O系(50℃)7)などの 日本海水学会誌およびCurrent Contents(Physical,平衡実験がある. Chemical Earth Scienoes)か ら海塩系の溶解平衡,2.24 成分系の平衡 状態図,相 平衡の利用などに関する文献を検索した. 朝 ら8,9)は中国における塩共生の 水熱変質作用を研 以下に,こ れらの論文の概要を紹介する. 究中,Autenriethら(1960年)によるNa+,Mg2+∥ 2. 溶 解 平 衡 のヘクサハイ ドライ ト(MgSO4・6H2O;以 下Hexの 2.12 および3成 分系の平衡 略号で示す)と レーバイ ト(Na2SO4・MgSO4・2.5H2O; 晶析プロセスに影響をおよぼす最も重要な因子は過 Low)晶 出領域で間違いを見いだ し,両 塩の相境界を 飽和,す なわち,driving forceで ある.過実験的に検討飽和度 した.実 験は等温法で行い,Hexが 消失 を推定するには溶液の実濃度のほかに,与 えられた温 す る不変点およびLowが 出現 し始める不変点の温度, 度での平衡濃度が必要である.塩化ナトリウム(NaCl)液組成および液底体組成を決定 し,状 態