郊外化-日本地域学会.pdf

都市化／郊外化／逆郊外化／逆都市化におけるレジリエント･コミュニティ戦略 立命館グローバル･イノベーション研究機構 豊田祐輔※ 立命館大学政策科学部 鐘ヶ江秀彦 総合地球環境学研究所 熊澤輝一 １．はじめに 少子高齢化･人口減少期を迎えた現在の日本においては、温暖化ガスの排出抑制に効果的で、高 齢者など自動車を運転できない住民にとって利便性があり、行政コストの削減を都市形態面から 推進するものとしてコンパクトシティ型都市政策が議論されている。「都市計画審議会」や「住宅 宅地審議会」などにおいてコンパクト化の方向性が示されているだけでなく、実際に富山市や青 森市などのいくつかの都市においては都市のコンパクト化が進められている。今後は人口や産業 の減少を考慮に入れた都市計画が必要であることが多くの研究者や専門家によって共有されてい るといえる（大西 2004 ；中山2010 など）。しかしながら、これまでのコンパクトシティ評価と しては経済、財政的なコスト面や交通量、建築密度などの物的な面からの評価が多く（西浦2008）、 都市のコンパクト化による社会的影響の評価や対策を論じた研究は限られている（評価の試みと して豊田〔2011〕など）。 本稿では、当該社会の相対的に脆弱な箇所に露呈してくるところに特徴がある災害（大屋根 1999）に着目し、来る都市のコンパクト化におけるレジリエント･コミュニティ1戦略の一思案を 提起する。しかしながら、本稿は事前防災によるレジリエンスに着目し、復興段階におけるレジ リエンスについては今後の課題としている。 １．現在の日本都市の空間構造モデル 都市のコンパクト化と大きく関わる都市形態の変化について、クラッセンや大西は、都市化か ら郊外化、そして逆都市化という都市の空間構造モデルを提案している。しかしながら、本研究 では、図1 で示しているように、日本における都市空間構造を単純に三つの段階で捉えていない。 本研究では、都市化から郊外化が進むのは同様であるが、その後は、現在問題視されている限界 集落現象、そして都心回帰に代表される逆郊外化（郊外からヒトが中心市街地へ戻りニュータウ ンが寂れること）が進んでいると考えている。このような現象、都市をコンパクト化するコンパ クトシティ戦略を選択として用いていると捉えることができる。本点においては、大西（2004） が論じている住民の都心回帰とそれを利用した都心部のコンパクト化という主張と通じるところ 1 本稿では、レジリエンス（resilience）を“The capacity of a system, community or society potentially exposed to hazards to adapt, by resisting or changing in order to reach and maintain an acceptable level of functioning and structure. This is determined by the degree to which the social system is capable of organizing itself to increase this capacity for learning from past disasters for better future protection and to improve risk reduction measures （UN/ISDR. Geneva 2004）”、つまり、「過去の災害や地域での経験を活 かして、災害による地域コミュニティへの人的･物的被害を回避･緩和（住民の知恵や経験を活かした事前防災） できるだけでなく、被害を受けても平時に近い地域コミュニティにおける生活を維持（復興期活動）できる能 力」と定義し、そのような能力を伴った地域コミュニティをレジリエント･コミュニティとする。そしてレジリ エント･コミュニティ戦略とは、そのような能力を高めるための戦略のことを意味する。 1 がある。しかし本研究では、そのコンパクト化に続いて、