《日本文学简史（第二版）》课件_9、近世文学（三）.ppt

劇文学南北の死後、江戸歌舞伎の集大成を成しとげた人は二世河竹黙阿弥(かわたけもくあみ)である。生涯に約三百六十の作品を著した。盗賊を題材とした白波物を得意とし、勧善懲悪のテーマと五七調のせりふ、魅力的な人物を配慮した作品は観客の心をよくとらえた。劇文学代表作には『鼠子紋東君新形(ねずみこもんはるのしんがた)』『三人吉三廓初買(さんにんきちざくるわのはつがい)』『青砥稿花紅彩画(あおとぞうしはなのにしきえ)』などがある。彼の作品の特色は、よく人情の機微をうがって写実の妙があり、取材の範囲が広い。明治期に入ってからも作家活動は続き、現在にまで上演を繰り返されるような名作を残している。和歌と国学和歌と国学庶民のエネルギーの上に展開した俳諧と異なり、長い伝統を背景とする和歌は、簡単には変貌できなかった。むしろ、漢学に対抗して行ってきた国学の成果と密接につながることによって、徐々に近世的性格を獲得していったといえる。和歌と国学近世初期の和歌は中世末期から固定化し、因襲的に続いている状態であった。細川幽斎は伝統的な二条流の重鎮として多くの門下を育てた。門下に堂上歌人としては中院通勝(なかのいんみちかつ)?烏丸光広(からすまるみつひろ)らがおり、地下歌人としては木下長嘯子や松永貞徳らがいる。特に松永貞徳は和歌や歌学を武士や金持ちの町人などに普及するのに力があった。和歌と国学元禄期になるとようやく和歌革新の気運がおこった。江戸茂睡は『僻言調』『梨本集』を著して保守的な二条歌学に反対し、伝統の打破を叫んだ。上方には下河辺長流がいて彼の歌学研究書『万葉集管見』は未完になっているが、国学発生につながっている。和歌と国学同じ万葉集の研究を手がけた僧侶契沖(けいちゅう)は『万葉代匠記』を著して、古典研究の文献学実証主義により国学研究の方法論的な基礎を築いた。和歌と国学この学問は京都の荷田春満(かだのあずままろ)や江戸の賀茂真淵などによって日本の古代精神を明らかにしようという方向を持った。これを国学という。真淵の万葉集を究めると同時にその歌風を自作にも具現しようと努めた。彼の門下には国学の継承者として本居宣長がいる。和歌と国学本居宣長は伊勢の松阪に住んで医を業としたが、真淵の門に入って国学の研究に力を尽くした。彼が30年余りの歳月をかけて買いた『古事記伝』は空前の名著として、今なお『古事記』の研究には必見の書となっている。和歌と国学また宣長は「源氏物語玉の小櫛」で源氏物語の本質を「もののあはれ」であると解明した。これは今までの儒教的?仏教的な見方から新しい文学観を打ち立てたことになる。和歌と国学宣長の死後、伴信友や本居春庭が文献学的?実証的な古典研究の方面を、平田篤胤が古代日本人の精神を追求する思想面を受け継いだ。特に篤胤の思想は神道と関わって積極化され、明治維新の思想基礎となった。和歌と国学日本の国学研究においての貢献が大きいことから、後の日本人が、荷田春満?賀茂真淵?本居宣長を国学三大人(さんうし)と呼ぶ。洒落本近世の町人社会の興味関心は遊里や劇場に集まっていた。そのうちの遊里を舞台にした小説は西鶴の浮世草子（好色物）によって一度開花していたが、やがてその浮世草子中国の小説の影響を受けて、新たに洒落本と呼ばれる一ジャンルを形成するに至った。洒落本従って初期の洒落本は漢文体書かれた戯文にすぎなかったが、しだいに遊里のありさまの描写を主とした写実的な短編小説に育っていった。体裁は半紙四つ切り数十枚以内の小型本が多かったため、小本とも、蒟蒻本とも呼ばれる。洒落本初め上方で起こった洒落本は田舎老人多田爺(いなかろうじんただのじじい)の『遊子方言(ゆうしほうげん)』によって様式が確定され、宝暦（1751～1764）から寛政年間（1789～1801）にかけて江戸で栄えた。その代表的作家は山東京伝であり、『通言総(つうげんそう)まがき』『傾城買四十八手(けいせいがいしじゅうはって)』などの作品で知られている。洒落本京伝は誰よりも遊里に対する愛情の深い作家であり、暖かい人間性に裏付けられた鋭い観察で遊里の世界を描いた。しかし、洒落本は風俗を乱すという理由で1790年に禁じられた。1792年ごろ再び刊行されたが、いずれも心理描写を主とした作品で、人情本に近づいていった。人情本人情本は、洒落本が禁じられた後、遊びの描写から情愛の描写へと移り、さらに、描写対象を遊里から芸妓や下町の子女へと移したものである。人情本は町人社会での恋愛や人情の葛藤を描いて婦女子の涙を誘ったので、初期には泣本とも呼ばれた。人情本代表的な作家は為永春水（1790～1843）で、多くは一人の男に二人或は三人の女を